令和8年度 午前の部 問6
民法
時効に関する問題
Aは、Bとの間で、令和2年9月1日、A所有の中古自動車をBに売る旨の売買契約を締結し、売買代金の支払期限を同年10月1日と定めた。この事例における売買代金債権(以下「本件債権」という。)の消滅時効に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア Aは、令和7年9月1日、Bに対し、売買代金の支払を催告し、令和8年2月1日、再度その支払を催告した後、同年5月1日、その支払を求める訴えを提起した。この場合には、Bは、同年7月1日、本件債権の消滅時効を援用することができる。
イ Cは、令和2年9月1日、Aとの合意により、Cの所有する土地に本件債権を被担保債権とする抵当権を設定した。この場合には、Cは、令和8年7月1日、本件債権の消滅時効を援用することができる。
ウ Aは、令和7年9月10日、Bについて、本件債権を請求債権とする財産開示手続の実施を申し立てたが、Bは同年10月10日に実施された財産開示期日に出頭せず、執行裁判所は、同日、財産開示手続を終了させた。この場合には、Bは、令和8年7月1日、本件債権の消滅時効を援用することができる。
エ Bは、令和8年6月1日、Aに対し、本件債権に係る債務を承認したが、その承認をした時点において、時効完成の事実を知らず、かつ、そのことに過失がなかった。この場合には、Bは、同年7月1日、本件債権の消滅時効を援用することができる。
オ Aは、令和7年9月1日、Bに対し、売買代金の支払を求める訴えを提起したが、令和8年2月10日、その訴えを取り下げ、同日、その取下げの効力が生じた。この場合には、Bは、同年7月1日、本件債権の消滅時効を援用することができる。
- 1アイ
- 2アオ
- 3イエ
- 4ウエ
- 5ウオ
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✓ これが正解1アイ
解説
アとイが正しい。再度の催告は猶予せず、物上保証人も援用できる
令和2年4月1日以後に生じた債権なので、改正後の民法の消滅時効の規定で判断します。売買代金債権の支払期限は令和2年10月1日で、Aは期限を知っているので、権利を行使できることを知った時から5年で時効が完成します。初日は算入しないので、何もなければ令和7年10月1日の終了で完成します。
アについて、令和7年9月1日の催告で、そこから6か月(令和8年3月1日まで)完成が猶予されます。民法第150条第2項により、猶予中の再度の催告は猶予の効力をもたず、令和8年3月1日の経過で時効は完成しています。5月1日の訴えの提起は完成後なので、Bは7月1日に援用できます。アは正しい記述です。イについて、民法第145条は、消滅時効の援用権者に物上保証人を含めています。7月1日には時効が完成しているので、Cは援用できます。イも正しい記述です。
ウについて、財産開示手続は民法第148条の事由で、取下げなどによらずに終了したときは、その終了の時から時効が新たに進行を始めます(更新)。期日にBが出頭せずに終了しても更新が生じるので、7月1日には時効は完成しておらず、ウは誤りです。エについて、判例は、時効完成後に債務を承認した債務者は、完成を知らなかったとしても、信義則上その後に時効を援用できないとしています。エは誤りです。オについて、訴えの取下げで権利が確定せずに終わった場合は、その時から6か月(令和8年8月10日まで)完成が猶予されるので、7月1日には援用できず、オは誤りです。したがって、アとイの組合せが正解です。
各事由が完成猶予だけか更新まで生じるかを、手続が最後まで進んだかどうかで見分けると整理しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2アオ:オを正しいとみている点が違います。令和8年2月10日に訴えが取り下げられても、そこから半年間は時効の完成が止まったままなので、7月1日の段階ではBはまだ援用できない状態です。アは正しい記述です。
- 3イエ:エを正しいとみている点が違います。完成後に債務を認めた者は、完成を知らず、知らないことに落ち度がなくても、その後に援用するのは信義に反して許されないというのが判例です。イ自体は正しい記述です。
- 4ウエ:ウとエはどちらも誤りです。財産開示手続が取下げ等によらずに終了すれば時効は更新され、時効完成後に承認した債務者は判例上援用できなくなるので、どちらも7月1日に援用はできません。
- 5ウオ:ウとオはどちらも誤りです。財産開示手続の終了で時効は更新され、訴えの取下げ後は6か月の猶予が続くため、いずれも令和8年7月1日の時点では時効の援用ができません。
出典:令和8年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問6(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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