令和7年度 午前の部 問8
民法
物権変動に関する問題
不動産の物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア A所有の甲土地がAからBへ、BからCへと順次売却された後、AB間の売買契約が合意により解除された場合には、Cは、BからCへの所有権移転登記がされていないときであっても、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。
イ A及びBが甲土地を共同相続した場合において、Bが、甲土地について単独で相続した旨の登記をした上で甲土地をCに売却し、その旨の登記がされたときは、Aは、Cに対し、当該登記の全部抹消登記手続をすることを請求することができる。
ウ 甲土地を所有するAが死亡し、Aの子B及びCのうちBが相続の放棄をしてCがAの唯一の相続人となった場合には、Bの債権者Dが甲土地をBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえたときであっても、Cは、Dに対し、甲土地の単独所有権の取得を主張することができる。
エ A所有の甲土地をAがBに売却したが、その旨の登記がされていないことを奇貨として、CがBを害する目的で甲土地をAから買い受け、その旨の登記がされた場合には、その後、Cが事情を知らないDに甲土地を売却し、その旨の登記がされたときであっても、Bは、Dに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。
オ AがB所有の甲土地を占有し、取得時効が完成した後、その旨の登記がされない間に、CがBから甲土地について抵当権の設定を受け、その旨の登記がされた場合において、Aがその後引き続き時効取得に必要な期間甲土地の占有を継続したときは、Aが当該抵当権の存在を容認していたなどの特段の事情がない限り、Aは、甲土地の取得時効を援用し、Cに対し、当該抵当権の消滅を主張することができる。
- 1アイ
- 2アエ
- 3イオ
- 4ウエ
- 5ウオ
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✓ これが正解5ウオ
解説
ウとオが正しい。相続放棄は登記不要、再度の時効取得で抵当権消滅
不動産の物権変動と登記について、民法第177条の第三者の範囲に関する判例で判断する問題です。
アについて、判例は、売買契約が合意解除された場合、解除前に目的物を譲り受けた第三者は、所有権取得の登記をしていなければ、その所有権を元の売主に対抗できないとしています。BからCへの登記がないCはAに所有権取得を主張できず、アは誤りです。イについて、判例は、共同相続人の一人が単独相続の登記をして第三者に譲渡した場合、他の共同相続人は自己の持分を登記なくして第三者に対抗できるが、請求できるのは自己の持分についての一部抹消(更正)登記にとどまり、全部の抹消は請求できないとしています。イは誤りです。
ウについて、判例は、相続の放棄の効力は絶対的で、何人に対しても登記なくしてその効力を生ずるとしています。CはDに対し、登記がなくても単独所有権を主張でき、ウは正しい記述です。エについて、判例は、背信的悪意者からの転得者は、その者自身が第一の買主との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、登記を備えれば所有権の取得を第一の買主に対抗できるとしています。事情を知らないDに対し、登記のないBは所有権を主張できず、エは誤りです。オについて、判例は、取得時効の完成後、所有権移転登記の前に抵当権の設定登記がされた場合でも、その後さらに時効取得に必要な期間占有を続けたときは、抵当権の存在を容認していたなどの特段の事情がない限り、占有者は時効を援用して抵当権の消滅を主張できるとしています。オは正しい記述です。したがって、ウとオの組合せが正解です。
相続の放棄は登記不要、合意解除や時効完成後の第三者は登記で決める、という対比が判断の決め手です。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アイ:アは合意解除前の第三者が登記なしで元の売主に対抗できるとする点、イは共同相続人が第三者の登記の全部抹消まで求められるとする点で、どちらも判例と合いません。
- 2アエ:アは合意解除と第三者の関係で登記を不要とする点、エは背信的悪意者から買い受けた善意のDにも登記のないBが勝つとする点で、いずれも誤っています。
- 3イオ:オは再度の時効取得で抵当権の消滅を主張できるという正しい記述ですが、イは全部抹消を求められるとする点で誤りです。Aが求められるのは自分の持分の範囲に限られます。
- 4ウエ:ウは相続の放棄の効力を登記なしで差押債権者に主張できるという正しい記述ですが、エは転得者自身が背信的悪意者でないのに登記のない第一の買主を勝たせている点で誤りです。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問8(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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