令和5年度 午前の部 問7
民法
物権変動に関する問題
不動産の物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 甲土地を所有するAが死亡し、その子B及びCがAを共同相続した場合において、BC間でBが甲土地を単独で取得する旨の遺産分割協議が成立したが、Cが甲土地を共同相続したものとして所有権の移転の登記をした上で、自己の法定相続分に相当する持分をDに売却してその旨の登記をしたときは、Bは、Dに対し、単独での甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
イ Aがその所有する甲土地をBに売却した後、Cが甲土地を正当な権原なく占有している場合には、Bは、所有権の移転の登記をしなくても、Cに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
ウ 金銭債権の債務者Aが、債権者Bとの間で、金銭の給付に代えてAが所有する甲土地の給付をする旨の代物弁済契約をした場合には、甲土地の所有権の移転の効果は、AからBへの所有権の移転の登記をした時に生ずる。
エ Aがその所有する甲土地をBの詐欺によりBに売却してその旨の登記をし、AがBとの間の売買契約を詐欺を理由として取り消した後、Bがその取消しにつき善意のCに甲土地を売却してその旨の登記をした場合であっても、Cにその善意であることにつき過失があるときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権のAへの復帰を対抗することができる。
オ AがB所有の甲土地を占有し、取得時効が完成した後、BがCに対し甲土地につき抵当権の設定をしてその旨の登記をした場合において、Aがその抵当権の設定の事実を知らずにその登記後引き続き時効取得に必要な期間甲土地を占有し、その期間経過後に取得時効を援用したときは、Aは、Cに対し、抵当権の消滅を主張することができる。
- 1アウ
- 2アオ
- 3イエ
- 4イオ
- 5ウエ
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✓ これが正解5ウエ
解説
ウは所有権移転が契約時、エは取消後の第三者は登記で決まるので誤り
不動産の物権変動を、登記がないと第三者に対抗できないという民法第177条と、関連する判例で判断します。誤っているものを2つ選びます。
アは正しい記述です。民法第899条の2第1項は、相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については登記などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないと定めています。Bは自分の法定相続分を超える部分を登記していないので、Cの持分を買って登記したDに単独所有を対抗できません。イも正しく、判例は、正当な権原なく占有する不法占拠者は第177条の第三者に当たらないとしているので、Bは登記なしに所有権を主張できます。
ウは誤りです。判例は、代物弁済契約による所有権の移転の効果は、原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生じるとしています。登記が必要になるのは、債務消滅の効果や第三者への対抗の場面です。エも誤りです。判例は、取消し後に現れた第三者とは、取消しによる所有権の復帰と第三者への譲渡が二重譲渡に似た関係になるとして、第177条で登記の先後により決めています。登記を備えたCに対し、Aは、Cの過失の有無にかかわらず復帰を対抗できません。
オは正しい記述です。判例は、取得時効の完成後に抵当権の設定登記がされても、占有者がその後引き続き時効取得に必要な期間占有して時効を援用すれば、抵当権は消滅するとしています。
したがって、ウとエを選ぶ組合せが正解です。取消し前の第三者は第96条第3項、取消し後の第三者は第177条、と時点で道具を切り替えるのが見分けのこつです。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:アとウを選ぶ組合せです。ウは代物弁済の所有権移転を登記時としていて誤りですが、アは法定相続分を超える部分を登記しないと第三者に対抗できないという第899条の2どおりで、正しい記述です。
- 2アオ:アとオを選ぶ組合せですが、遺産分割による取得も法定相続分を超える部分は登記が必要とするアも、再度の時効取得で抵当権が消えるとするオも正しく、誤りが含まれません。
- 3イエ:イとエを選ぶ組合せです。エは取消し後の第三者の過失を問題にしている点で誤りですが、イは不法占拠者に対して登記なしで所有権を主張できるとする判例どおりで、正しい記述です。
- 4イオ:イとオを選ぶ組合せです。不法占拠者は登記の欠缺を主張できる第三者ではないとするイも、抵当権設定登記後の占有継続で時効取得し抵当権が消えるとするオも、判例どおりで正しい記述です。
出典:令和5年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問7(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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