令和6年度 午後の部 問20
不動産登記法
相続登記に関する問題
次の対話は、法定相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記(以下「法定相続分での相続登記」という。)がされている場合の登記手続に関する教授と学生の対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
教授: 今日は、甲土地を所有するAが死亡し、甲土地について法定相続分での相続登記がされている場合において、Aの相続人間で遺産分割協議が成立し、相続人の一人であるBが甲土地の所有権を単独で取得したという事例について考えてみましょう。
当該事例において、Bが、他の相続人と共同して、他の相続人からBへの持分全部の移転の登記を申請することはできますか。
学生:ア いいえ、できません。
教授: それでは、当該事例において、甲土地をBの単独所有とする所有権の更正の登記を申請する場合について考えていきましょう。当該所有権の更正の登記の登記原因は何になりますか。
学生:イ 登記原因は錯誤になります。
教授: 当該所有権の更正の登記は、誰から申請することができますか。
学生:ウ Bが、単独で申請することができます。
教授: では、当該事例において、法定相続分での相続登記がされた後に、甲土地の所有権全部を目的として抵当権の設定の登記がされた場合において、当該所有権の更正の登記の申請をするときは、添付情報として当該抵当権の抵当権者の承諾を証する情報を提供しなければなりませんか。
学生:エ はい、当該承諾を証する情報を提供しなければなりません。
教授: 最後に、当該事例において、所有権の更正の登記が申請され、その登記が完了した場合には、当該登記の登記権利者に登記識別情報が通知されますか。
学生:オ いいえ、登記識別情報は通知されません。
- 1アイ
- 2アオ
- 3イウ
- 4ウエ
- 5エオ
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✓ これが正解4ウエ
解説
ウとエが正しい。更正の原因は遺産分割で、Bが単独で申請できる
法定相続分での相続登記の後に遺産分割があった場合の登記手続を、不動産登記法と法務省の通達・先例で判断します。
アは誤りです。法定相続分での相続登記がされている場合でも、遺産分割を登記原因として、他の相続人からBへの持分全部の移転の登記を共同で申請することはできます。イは誤りです。甲土地をBの単独所有とする所有権の更正の登記の登記原因は遺産分割であり、錯誤ではありません。登記された当時は法定相続分のとおりで誤りはなく、その後の遺産分割で権利関係が変わったからです。ウは正しく、令和5年4月1日からの法務省の取扱いにより、この場面の所有権の更正の登記は、遺産分割で取得したBが単独で申請することができます。エは正しく、所有権の更正の登記は他の相続人の持分を一部抹消する実質を持つので、登記上の利害関係を有する第三者がいるときはその承諾がなければすることができず、抵当権者の承諾を証する情報を提供しなければなりません。オは誤りです。この所有権の更正の登記によりBは新たに他の相続人の持分を取得するので、登記が完了すると登記権利者のBに登記識別情報が通知されます。
したがって正しいのはウとエで、ウとエを選ぶ組合せが正解です。
法定相続分の登記の後の遺産分割は、持分移転でも更正でもよく、更正なら原因は遺産分割・Bの単独申請・Bに登記識別情報、と一続きで覚えておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アイ:アは持分移転の登記ができないとする点で、イは更正の原因を錯誤とする点で誤りです。遺産分割を原因とする持分移転の共同申請もできます。
- 2アオ:アは持分移転の方法を否定する点で、オは更正で持分が増えるBに登記識別情報が通知されないとする点で、どちらも誤りです。
- 3イウ:ウはBの単独申請として正しいのですが、イは誤りです。登記当時に誤りはなく、後から遺産分割で変わったので原因は遺産分割です。
- 5エオ:エの抵当権者の承諾は正しいものの、オは誤りです。持分を新たに取得するBには、更正の登記の完了で登記識別情報が通知されます。
出典:令和6年度 司法書士試験 午後の部(法務省)問20(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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