令和7年度 午前の部 問26
刑法
刑法に関する問題
背任罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aが、自己が所有する不動産に抵当権を設定した後にその旨の登記がされていないのを奇貨として、更に他の者に対して抵当権を設定し、その旨の登記を完了させた。この場合、1番抵当権者に対するAの抵当権設定の登記義務は設定者であるA固有の事務であって他人の事務ではないから、Aに背任罪は成立しない。
イ 任務に違背して担保を徴せずに回収見込みのない者に貸付けを行った場合には、当該貸付けに係る貸金債権の返済期限が到来し、現実に回収不能であることが明らかとなった時点で、初めて背任罪における「財産上の損害」が認められる。
ウ 「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」については、意欲ないし積極的認容まで必要である。
エ 「自己若しくは第三者の利益」における「利益」には、自己の信用・面目が失墜することを防止することも含まれる。
オ 自己又は第三者の利益を図る目的と本人の利益を図る目的が併存する場合であっても、本人の利益を図る目的が決定的な動機でなく、主として自己又は第三者の利益を図る目的で行われたものであれば、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」があったと認定するのを妨げない。
- 1アイ
- 2アウ
- 3イエ
- 4ウオ
- 5エオ
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✓ これが正解5エオ
解説
エとオが正しい。面目の維持も利益に含み、目的は主たる動機で判断
背任罪について、刑法第247条と判例で判断する問題です。第247条は、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的で任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立するとしています。
アについて、判例は、抵当権を設定した者がその登記に協力する任務は、主として抵当権者のために負うものであり、他人の事務に当たるとして、二重抵当の事案で背任罪の成立を認めています。固有の事務として背任罪を否定するアは誤りです。イについて、判例は、財産上の損害は経済的見地から本人の財産状態を評価して判断するとし、回収見込みのない者への無担保の貸付けでは、貸付けの時点で財産上の損害が認められるとしています。返済期限の到来後に初めて損害が生じるとするイは誤りです。
ウについて、判例は、図利加害目的について、意欲ないし積極的認容までは要しないとしています。ウは誤りです。エについて、判例は、自己の利益を図る目的の利益は財産上の利益に限らず、自己の信用・面目の失墜を防ぐといった身分上の利益も含むとしています。エは正しい記述です。オについて、判例は、本人の利益を図る目的と自己または第三者の利益を図る目的が併存していても、本人の利益を図る目的が決定的な動機でなく、主として自己または第三者の利益を図る目的であれば、図利加害目的を認定できるとしています。オは正しい記述です。したがって、エとオの組合せが正解です。
図利加害目的は主たる動機で判断し、利益には面目の維持も含む、と目的の要件をまとめて押さえましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アイ:アは二重抵当で設定者の登記協力を固有の事務とする点、イは返済期限が来るまで財産上の損害を認めない点で、どちらも判例と逆の誤った記述です。
- 2アウ:アは登記協力義務を他人の事務でないとする点、ウは図利加害目的に意欲ないし積極的認容を求める点で、いずれも判例の立場と合いません。正しい記述を含みません。
- 3イエ:エは自己の信用・面目の失墜を防ぐことも利益に含むという判例どおりの記述ですが、イは誤りです。判例は、回収見込みのない貸付けの時点で損害を認めています。
- 4ウオ:オは主として自己や第三者の利益を図る目的なら図利加害目的を認めるという正しい記述ですが、ウは目的に意欲ないし積極的認容まで必要とする点で誤りです。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問26(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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