令和6年度 午前の部 問28
会社法・商法
譲渡制限株式に関する問題
株主の権利に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕第27問から第34問までの試験問題については、問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして、解答してください。
ア 取締役会設置会社の唯一の株主がその保有する譲渡制限株式を他人に譲渡した場合には、取締役会の決議による承認がないときであっても、その譲渡は、当該会社に対する関係において有効である。
イ 株式会社は、基準日株主が行使することができる権利が株主総会における議決権である場合において、当該基準日株主の権利を害しないときは、基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を議決権を行使することができる者と定めることができる。
ウ 株券発行会社の株券を所持する株主は、当該会社に対し、当該株主に係る株主名簿記載事項を記載した書面の交付又は当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。
エ 株主に剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。
オ 監査役設置会社において、株主が取締役会の議事録の閲覧又は謄写を請求するためには、裁判所の許可を得ることを要しない。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イエ
- 4イオ
- 5ウオ
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✓ これが正解5ウオ
解説
ウとオが誤り。株券発行会社は書面交付の対象外、議事録は裁判所の許可
株主の権利について、譲渡制限株式の譲渡、基準日後の株主の議決権、株主名簿記載事項の書面、剰余金の配当・残余財産の分配の権利、取締役会の議事録の閲覧を確かめる問題です。定款に別段の定めはないものとして考えます。誤っているものを選びます。
アは正しい記述です。判例は、譲渡制限の趣旨は会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぎ、譲渡人以外の株主の利益を守ることにあるとして、唯一の株主が譲渡した場合には、取締役会の承認がなくても会社に対する関係で有効としています。イも正しい記述です。会社法は、基準日株主が行使できる権利が株主総会の議決権である場合には、基準日株主の権利を害しない限り、基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を議決権を行使できる者と定めることができるとしています。エも正しい記述です。会社法は、剰余金の配当を受ける権利と残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは効力を有しないとしています。
ウは誤りです。会社法第122条第1項は、株主が株主名簿記載事項を記載した書面の交付等を請求できるとしていますが、同条第4項により、株券発行会社には適用されません。株券発行会社の株主は株券で権利を示せるからです。オも誤りです。会社法第371条第3項は、監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社では、株主が取締役会の議事録の閲覧・謄写を請求するには裁判所の許可を得なければならないとしています。監査役などによる監督があるので、株主の閲覧は裁判所が必要性を確かめてから認める仕組みです。
したがって誤っているのはウとオです。株主名簿の書面は株券がない会社の株主のための制度、取締役会の議事録は監査役などのいる会社では裁判所の許可が要る、と目的とセットで覚えましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:ウは株券発行会社の株主にも株主名簿記載事項の書面の交付請求を認める点で誤りですが、アの唯一の株主による譲渡が会社との関係で有効という記述は判例どおりで、アを誤りとする点が違います。
- 2アエ:アとエはどちらも正しい記述です。唯一の株主による譲渡制限株式の譲渡は承認がなくても会社に対して有効であり、配当と残余財産分配の権利を両方とも奪う定款の定めは無効です。
- 3イエ:イとエはどちらも会社法どおりの正しい記述です。議決権については基準日後の株式取得者にも行使を認めることができ、配当と残余財産分配の権利の全部を与えない定めは効力がありません。
- 4イオ:オは監査役設置会社でも裁判所の許可なしに議事録を閲覧できるとする点で誤りですが、イの基準日後に株式を取得した者に議決権を認める定めは許されるので、イを誤りとする点が合いません。
出典:令和6年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問28(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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