令和8年度 午後の部 問5
民事訴訟法
控訴に関する問題
控訴に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 原告が被告に対して売買代金請求及び貸金返還請求をした訴訟において、当該売買代金請求については棄却し、当該貸金返還請求については認容する判決がされた後に、当該判決に対して被告のみが控訴をしたときは、当該訴訟のうち当該売買代金請求に係る部分は控訴審に移審しない。
イ 請求棄却の判決を求めていた被告は、原告の訴えを却下した第一審判決に対し、第一審判決を取り消して請求を棄却する旨の判決を求める旨の控訴をすることができる。
ウ 第一審において原告の請求を全部認容する判決がされた後に、当該判決に対して被告のみが第一審判決を取り消して請求を棄却する旨の判決を求めて控訴をしたときは、被控訴人(第一審原告)は、自らの請求の拡張をするための附帯控訴をすることができない。
エ 控訴が不適法でその不備を補正することができない場合において、控訴裁判所が判決で当該控訴を却下するときは、口頭弁論を経ることを要しない。
オ 当事者双方が、控訴審の口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合において、法定の期間内に期日指定の申立てをしないときは、控訴の取下げがあったものとみなされる。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イエ
- 4イオ
- 5ウオ
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✓ これが正解1アウ
解説
アとウが誤り。控訴で請求全部が移審し、勝訴者も附帯控訴できる
控訴の範囲(移審)、控訴の利益、附帯控訴、控訴の却下と取下げの擬制について、民事訴訟法の規定と判例で判断する問題です。誤っているものを選びます。
アは誤りです。控訴が提起されると、不服を申し立てた部分に限らず、第一審判決の対象となった請求の全部について確定が遮断され、控訴審に移ると扱われています(控訴不可分の原則)。被告だけが控訴した場合でも、売買代金請求の部分も控訴審に移審します。イは正しい記述です。判例は、請求棄却を求めていた被告は、訴え却下判決に対し、より有利な請求棄却判決を求めて控訴できるとしています。ウは誤りです。判例は、第一審で全部勝訴した当事者でも、相手方の控訴に附帯して請求を拡張するための附帯控訴ができるとしています。
エは正しい記述です。第290条は、控訴が不適法でその不備を補正することができないときは、控訴裁判所は口頭弁論を経ないで判決で控訴を却下できると定めています。オも正しい記述です。第292条第2項は訴えの取下げの擬制を定める第263条を控訴の取下げに準用しているので、当事者双方が控訴審の期日に出頭せず、法定の期間内に期日指定の申立てもしないときは、控訴の取下げがあったものとみなされます。
したがって、誤っているのはアとウです。控訴は請求全部を控訴審に移し、勝訴した被控訴人も附帯控訴で請求を広げられる、と押さえておくと判断しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2アエ:アは誤りですが、エは正しい記述です。補正のできない不適法な控訴は、口頭弁論を開かないまま判決で却下できると民事訴訟法に定められています。
- 3イエ:イとエはどちらも正しい記述です。被告は訴え却下判決に請求棄却を求めて控訴でき、不備を補正できない不適法な控訴は口頭弁論なしで却下されます。
- 4イオ:イもオも正しい記述です。オについては、訴えの取下げを擬制する規定が控訴にも準用されるので、双方欠席のまま期日指定の申立てがなければ控訴を取り下げたものと扱われます。
- 5ウオ:ウは誤りですが、オは正しい記述です。双方が期日に出頭せず期日指定の申立てもない状態が続けば、準用規定によって控訴の取下げとみなされます。
出典:令和8年度 司法書士試験 午後の部(法務省)問5(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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