令和8年度 午後の部 問3
民事訴訟法
文書提出命令に関する問題
文書提出命令に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 裁判所は、挙証者が文書の所持者に対してその閲覧を求めることができる場合において、証拠調べの必要性を欠くときは、文書提出命令の申立てを却下することができる。
イ 裁判所は、文書が専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていないものである場合には、開示によって当該文書の所持者に看過し難い不利益が生じないときであっても、当該文書の提出を命ずることができない。
ウ 裁判所は、文書が刑事事件に係る訴訟に関する書類に該当する場合において、当該文書が挙証者と当該文書を所持している保管者との間の法律関係について作成されたものであり、当該保管者が当該文書の提出を拒否することがその裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものであると認められるときは、当該文書の提出を命ずることができる。
エ 第三者に対して文書提出命令がされた場合には、当該第三者は、即時抗告をすることができない。
オ 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させた場合には、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めなければならない。
- 1アウ
- 2アオ
- 3イウ
- 4イエ
- 5エオ
答えと解説を見る
✓ これが正解1アウ
解説
アとウが正しく、イは判例と逆、エ・オは条文と違う
文書提出命令について、民事訴訟法第220条以下の規定と判例で判断する問題です。
アは正しい記述です。挙証者が文書の所持者に閲覧を求めることができる文書には提出義務がありますが、提出義務があっても、証拠調べの必要性を欠くときは、裁判所は文書提出命令の申立てを却下できるとされています。イは誤りです。判例は、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部への開示が予定されていない文書であっても、開示によって所持者に看過し難い不利益が生じるおそれがない場合には、いわゆる自己利用文書に当たらないとしています。この場合、提出を命ずることができます。ウは正しい記述です。刑事事件に係る訴訟に関する書類は一般的な提出義務からは除かれていますが、判例は、挙証者と所持者との間の法律関係について作成された文書に当たり、保管者の提出拒否が裁量権の範囲の逸脱又は濫用と認められるときは、提出を命ずることができるとしています。
エは誤りです。第223条第7項は、文書提出命令の申立てについての決定に対しては即時抗告ができると定めており、提出を命じられた第三者もこれによって争えます。オも誤りです。第224条第2項は、相手方の使用を妨げる目的で提出義務のある文書を滅失させた場合も第1項と同様としており、裁判所は相手方の主張を真実と認めることができるにとどまります。真実と認めるかどうかは裁判所の判断に委ねられています。
したがって、正しいのはアとウです。文書提出命令の制裁は、真実と認めることができるという裁量の定めであることを押さえておくと、断定的な記述を見抜きやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2アオ:アは正しいものの、オは誤りです。文書を滅失させた当事者への効果は相手方の主張を真実と認めることができるというもので、裁判所に義務を課す定めではありません。
- 3イウ:ウは正しいものの、イは誤りです。内部利用目的の文書でも、開示による看過し難い不利益が生じないのであれば自己利用文書には当たらず、提出を命じられます。
- 4イエ:イもエも誤りです。内部文書は看過し難い不利益がなければ提出を命じられ、提出命令を受けた第三者は即時抗告で不服を申し立てることができます。
- 5エオ:エもオも誤りです。第三者でも即時抗告ができ、文書を滅失させたときの真実擬制は裁判所の裁量であって、必ず真実と認めるわけではありません。
出典:令和8年度 司法書士試験 午後の部(法務省)問3(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
同じ用語が出る問題
- 令和7年度 午後の部 問3:民事訴訟法に関する問題(証拠)
- 令和6年度 午後の部 問4:和解に関する問題(証拠)
- 令和5年度 午前の部 問26:刑法に関する問題(証拠)
- 令和5年度 午後の部 問2:通常共同訴訟に関する問題(証拠)
- 令和5年度 午後の部 問1:応訴管轄に関する問題(証拠)
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)