令和8年度 午後の部 問4
民事訴訟法
既判力に関する問題
既判力に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 売買契約による所有権移転を請求原因とする売買の目的物の所有権の確認を求める訴訟において、売主である被告が買主である原告に対して詐欺を理由とする契約の取消権を行使することができたがこれを行使しないまま口頭弁論が終結し、請求認容の判決が確定したときであっても、当該売主は、その後の当該買主に対して当該売買の目的物の返還を求める訴訟において、当該取消権を行使して、所有権の存否を争うことができる。
イ 訴えを却下する判決は、当該判決において訴えが不適法である理由とされた訴訟要件の欠缺について、既判力を有しない。
ウ 訴訟の原告であった者が、当該訴訟の確定判決に基づく強制執行を申し立て、当該訴訟の被告であった者に対する強制執行が行われた場合において、その確定判決の成立過程において、原告が被告の権利を害する意図の下に、被告が訴訟手続に関与することを妨げ、その結果本来あるべきではない内容の確定判決を取得したときは、その強制執行により損害を被った当該被告であった者は、当該原告であった者を被告とする訴えにより、不法行為による損害賠償請求をすることができる。
エ 土地の賃貸人が、当該土地上に建物を所有する当該土地の賃借人に対し、建物収去土地明渡しを請求する訴えを提起し、当該賃借人が建物買取請求権を行使しないまま建物収去土地明渡しの請求を認容する判決が確定した。その後、当該賃借人が当該賃貸人を被告としてその確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起した場合には、当該賃借人は、判決確定後に当該建物について建物買取請求権を行使したことを異議の事由として主張することができない。
オ 建物の借賃増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決は、原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り、前提である借賃増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について既判力を有する。
- 1アイ
- 2アエ
- 3イウ
- 4ウオ
- 5エオ
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✓ これが正解4ウオ
解説
ウとオが正しい。取消権は遮断され、建物買取請求権は遮断されない
既判力が後の訴訟にどう及ぶか(基準時後の形成権の行使・訴訟判決の既判力・判決の騙取)を、判例で判断する問題です。
アは誤りです。判例は、詐欺による取消権を事実審の口頭弁論終結時(基準時)より前に行使できたのに行使しなかった場合、確定判決の後にこれを行使して所有権の存否を争うことは既判力によって遮断されるとしています。取消権は売買契約そのものに付着した瑕疵だからです。イも誤りです。訴え却下判決にも、却下の理由とされた訴訟要件の欠缺について既判力が生じると解されています。ウは正しい記述です。判例は、当事者が相手方の権利を害する意図で訴訟手続への関与を妨げるなどして本来あるべきでない確定判決を取得し、これに基づいて強制執行をした場合には、既判力があっても不法行為による損害賠償請求ができるとしています。
エは誤りです。判例は、建物買取請求権は明渡請求権の発生原因に付着する瑕疵ではなく別個の権利なので、前の訴訟で行使しなかったとしても、判決確定後に行使して請求異議の事由として主張できるとしています。オは正しい記述です。判例は、借賃増減請求により増減された賃料額の確認訴訟の確定判決の既判力は、特段の事情がない限り、増減請求の効果が生じた時点の賃料額の判断に生じるとしています。
したがって、正しいのはウとオです。基準時後の形成権の行使は、取消権は遮断され、建物買取請求権は遮断されない、と対にして覚えると見分けやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アイ:どちらも誤りなので、この組合せは正解になりません。売買の詐欺は口頭弁論の終結前に主張すべきだったので後から蒸し返せず、門前払いの判決も、何が欠けていたかという点で次の訴訟を縛ります。
- 2アエ:アとエはどちらも誤りで、結論がちょうど逆になっています。詐欺取消権は判決確定後に持ち出せませんが、建物買取請求権は確定後に行使して請求異議の事由にできます。
- 3イウ:ウは正しいものの、イは誤りです。訴訟要件がないとして却下した判決も、その訴訟要件が欠けていたという判断については後の訴訟を拘束します。
- 5エオ:賃料額確認の判断は正しいのですが、借地上の建物を買い取らせる権利は契約の瑕疵とは別物で、明渡判決の確定後でも使え、執行を止める根拠になります。この点でエが誤りです。
出典:令和8年度 司法書士試験 午後の部(法務省)問4(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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