令和8年度 午後の部 問2
民事訴訟法
訴えに関する問題
訴訟要件に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 訴訟の係属中に、原告と被告との間で原告が当該訴訟に係る訴えを取り下げる旨の合意が裁判外で成立した場合には、当該訴えは、権利保護の利益を欠く。
イ 動産の引渡しを求める訴えは、当該引渡しが執行不能になった場合における履行に代わる損害賠償の請求を併合して提起することができる。
ウ 原告が被告に対して金銭債権について債務不存在確認の訴えを提起した後に、当該被告が当該原告に対して当該金銭債権に基づきその全額の支払を求める反訴を提起した場合には、当該債務不存在確認の訴えは、確認の利益を欠く。
エ 土地の賃借人が賃貸人に対して賃借権に基づき当該土地の引渡しを求める訴えを提起し、当該訴えに係る訴訟が係属している場合においては、賃貸人が賃借権の存否を争っているときであっても、賃借人が賃貸人に対して賃借権の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。
オ 遺言が無効であることの確認を求める訴えは、過去の法律行為の確認を求めるものであるため、確認の利益を欠く。
- 1アウ
- 2アオ
- 3イウ
- 4イエ
- 5エオ
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✓ これが正解5エオ
解説
エとオが誤り。給付の訴えがあっても確認の利益は失われない
訴えの利益(権利保護の利益・確認の利益)と請求の併合について、判例の立場で判断する問題です。誤っているものを選びます。
アは正しい記述です。判例は、訴えを取り下げる旨の合意が裁判外で成立した場合、原告は権利保護の利益を失い、訴えは却下されるとしています。イも正しい記述です。動産の引渡しを求める訴えに、引渡しの執行ができなかった場合の履行に代わる損害賠償の請求(代償請求)を併合して提起することは、判例で認められています。ウも正しい記述です。判例は、債務不存在確認の訴えの後に、同じ債権の全額の支払を求める反訴が提起されたときは、確認の訴えは確認の利益を欠くとしています。反訴の判決で債権の存否が判断されるからです。
エは誤りです。引渡しを求める給付の訴えが係属していても、その前提となる賃借権の存否を賃貸人が争っていれば、賃借権そのものの確認を求める利益は否定されないとするのが判例です。給付の訴えの判決では、理由中で判断された賃借権の存否に既判力が生じないためです。オも誤りです。判例は、遺言無効確認の訴えを、遺言が有効であれば生ずる現在の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと理解し、確認の利益がある場合には適法としています。
したがって、誤っているのはエとオです。確認の利益は、紛争を最も有効・適切に解決できるかという観点で判断され、過去の行為の確認でも認められる場合がある、と押さえておくと区別しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:アもウも正しい記述です。取下げの合意ができた訴えは権利保護の利益を欠き、債務不存在確認は同じ債権の給付を求める反訴が出ると確認の利益を失うとされています。
- 2アオ:オは誤りですが、アは正しい記述です。裁判外で取下げの合意が成立した訴えは、続ける利益がないとして却下されるのが判例の扱いです。
- 3イウ:イとウはどちらも正しい記述です。代償請求の併合は認められ、反訴が提起された後の債務不存在確認は、反訴の中で決着がつくため確認の利益がなくなります。
- 4イエ:エは誤りですが、イは正しい記述です。動産の引渡請求と、執行できなかったときの損害賠償請求を一つの訴えでまとめて求めることは許されています。
出典:令和8年度 司法書士試験 午後の部(法務省)問2(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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