令和7年度 午前の部 問15
民法
抵当権に関する問題
抵当権の消滅に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 抵当権者が同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権を放棄した場合において、当該他の債権者の債権が弁済により消滅したときは、その抵当権は、放棄がなかったのと同じ状態に戻る。
イ 抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当不動産の代価をその抵当権者に弁済した場合には、後順位の抵当権は、その順位が上昇する。
ウ 共有不動産全体に抵当権が設定されている場合には、当該共有不動産の共有持分のみを取得した第三取得者は、自己の共有持分について単独で抵当権消滅請求をすることができる。
エ 抵当権を実行することができる時から民法第166条第2項の消滅時効期間が経過したときは、抵当権設定者は、抵当権者に対し、時効による抵当権の消滅を主張することができる。
オ 地上権を目的として抵当権を設定した地上権者は、その地上権を放棄したときであっても、その放棄をもって抵当権者に対抗することができない。
(参考)
民法
第166条 (略)
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 (略)
- 1アウ
- 2アオ
- 3イウ
- 4イエ
- 5エオ
答えと解説を見る
✓ これが正解2アオ
解説
アとオが正しい。設定者には抵当権だけの時効消滅を主張できない
抵当権の消滅について、民法の条文と判例で判断する問題です。
アについて、民法第376条第1項は、抵当権者が同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権を放棄できると定めています。この放棄は、受益する債権者との関係で優先弁済を主張しないという相対的な効果を持つにとどまるので、その債権者の債権が弁済で消滅すれば放棄の効果を受ける者がいなくなり、放棄がなかったのと同じ状態に戻ります。アは正しい記述です。イについて、第378条は、代価弁済がされたときは、抵当権はその第三者のために消滅すると定めています。この消滅は代価を弁済した第三取得者との関係でのものと解されており、後順位の抵当権の順位を上昇させる効果までは生じません。イは誤りです。
ウについて、判例は、共有不動産全体に抵当権が設定されている場合、共有持分のみを取得した第三取得者は抵当権消滅請求をすることができないとしています。持分ごとの消滅請求を認めると、抵当権者が不可分の担保を分断されるためです。ウは誤りです。エについて、第396条は、抵当権は債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ時効によって消滅しないと定めています。抵当権設定者は抵当権だけの時効消滅を主張できず、エは誤りです。オについて、第398条は、地上権を抵当権の目的とした地上権者は、その権利を放棄しても抵当権者に対抗できないと定めており、オは正しい記述です。したがって、アとオの組合せが正解です。
抵当権の時効消滅は、債務者と設定者に対しては被担保債権と運命を共にする、と第396条を軸に覚えておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:アは相対的放棄の受益債権者の債権が消えれば元の状態に戻るという正しい記述ですが、ウは誤りです。判例は、共有持分だけの第三取得者による抵当権消滅請求を認めていません。
- 3イウ:イは代価弁済で後順位の抵当権の順位が上がるとする点、ウは持分だけの第三取得者に抵当権消滅請求を認める点で、どちらも誤りです。正しい記述を含みません。
- 4イエ:イは代価弁済に順位上昇の効果を認める点で、エは抵当権設定者が抵当権だけの時効消滅を主張できるとする点で第396条と、それぞれ食い違います。
- 5エオ:オは正しい記述です。一方でエは、被担保債権が残っているのに設定者が抵当権のみの時効による消滅を主張できるとしており、誤りです。オの相手はアです。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問15(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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