令和4年度 午前の部 問13
民法
留置権に関する問題
留置権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 建物の賃借人は、賃貸人に対して有する造作買取代金債権を被担保債権として、当該建物について留置権を行使することができる。
イ 建物の賃借人は、賃貸借契約の終了後においては、当該建物について留置権を行使する場合であっても、従前のとおり当該建物に居住することはできない。
ウ 他人物売買の売主から目的物の引渡しを受けた買主は、所有者から当該目的物の返還請求を受けた場合には、売主に対して有する損害賠償請求権を被担保債権とする留置権を主張して返還を拒むことはできない。
エ 留置物の所有者である債務者から当該留置物を譲り受けた第三取得者は、留置権者が留置物の占有において善良な管理者の注意を怠ったとしても、留置権の消滅請求をすることはできない。
オ 留置権者は、留置権による競売が行われた場合には、その換価金を留置することができる。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イエ
- 4イオ
- 5ウオ
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✓ これが正解5ウオ
解説
ウとオが正しく、ア・イ・エは留置権の判例と逆の結論です。
留置権(他人の物を占有する者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで物を手元にとどめておける権利)の成立要件と効力を、民法第295条・第298条と判例で判断する問題です。成立には、債権とその物との牽連性(物に関して生じた債権であること)が必要です。
ウは正しい記述です。判例は、他人物売買の買主が売主に対してもつ損害賠償請求権は、その物自体から生じた債権とはいえないとして、所有者からの返還請求に対し、その債権による留置権を主張することはできないとしています。オも正しく、判例は、留置権による競売が行われた場合、留置権者はその換価金を留置することができるとしています。
アは誤りです。判例は、造作買取代金債権は造作に関して生じた債権であって建物に関して生じた債権ではないとして、建物について留置権を行使することはできないとしています。イも誤りで、民法第298条第2項ただし書は、物の保存に必要な使用は債務者の承諾がなくてもできるとしています。判例は、建物の賃借人が留置権に基づいて従前どおり居住することは保存に必要な使用にあたるとしています(使用による利益は不当利得として返還が必要です)。エも誤りです。民法第298条第3項は、留置権者が善管注意義務などに違反したとき、債務者が消滅を請求できるとしていますが、判例は、留置物の所有権を譲り受けた第三取得者もこの消滅請求ができるとしています。
したがって、正しいものはウとオです。留置権は物と債権の結びつきが命なので、造作や他人物売買の損害賠償のように物そのものから生じていない債権では成立しない、と押さえると見分けられます。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:ウは正しいものの、アが入っています。造作買取代金債権は造作という別の物から生じた債権なので、それを理由に建物をとどめておくことはできず、アは誤りです。
- 2アエ:アもエも判例と逆です。造作の代金を理由に建物を留置することは認められず、他方で、留置物を譲り受けた者は善管注意義務違反を理由に消滅請求ができます。
- 3イエ:イは保存のための使用として居住を続けることを否定している点で、エは第三取得者の消滅請求を否定している点で誤りです。この組合せは正しいものを含みません。
- 4イオ:オは正しいものの、イが入っています。賃借人が留置権に基づいてそのまま住み続けることは物の保存に必要な使用として許されるので、居住できないとするイは誤りです。
出典:令和4年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問13(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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