令和7年度 午前の部 問11
民法
抵当権に関する問題
担保権の行使に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 留置権者は、留置権による競売を申し立てることができない。
イ 一般の先取特権者は、民事執行法上の担保権の実行手続によることなく、債務者の有する債権を直接取り立てることができる。
ウ 質権設定者は、被担保債務の弁済期が到来した後、質権者との間で、被担保債務の弁済として質物の所有権を質権者に取得させる旨の合意をすることができる。
エ 抵当権者は、物上代位権の行使によらなければ、抵当不動産の賃料を被担保債権の弁済に充てることができない。
オ 動産譲渡担保権が同一の目的物に重複して設定されている場合には、後順位譲渡担保権者は、私的実行をすることができない。
- 1アイ
- 2アエ
- 3イウ
- 4ウオ
- 5エオ
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✓ これが正解4ウオ
解説
ウとオが正しい。弁済期後の流質合意は可、後順位は私的実行不可
担保権の実行方法について、民法・民事執行法の規定と判例で判断する問題です。
アについて、民事執行法第195条は、留置権による競売は担保権の実行としての競売の例によると定めており、留置権者も競売を申し立てることができます。できないとするアは誤りです。イについて、債権を直接取り立てることができる旨の規定は、質権者について民法第366条第1項に置かれていますが、一般の先取特権にはありません。一般の先取特権者が債務者の債権から優先弁済を受けるには、民事執行法の担保権の実行手続によることになるので、イは誤りです。ウについて、民法第349条が禁じているのは、設定行為または債務の弁済期前の契約で質権者に質物の所有権を取得させることです。弁済期が到来した後の合意であれば禁止されず、ウは正しい記述です。
エについて、民事執行法第180条は、不動産担保権の実行方法として担保不動産競売のほかに担保不動産収益執行を定めています。抵当権者は、物上代位によるほか、収益執行によっても賃料を被担保債権の弁済に充てられるので、エは誤りです。オについて、判例は、動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合、後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができないとしています。後順位の者による実行を認めると、先順位の譲渡担保権者の実行の機会が失われかねないためです。オは正しい記述です。したがって、ウとオの組合せが正解です。
流質の禁止は弁済期前の契約に限られる、と時期で区切って覚えておくと、ウのような記述を判断しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アイ:アは留置権者の競売申立てを否定する点で民事執行法と合わず、イは一般の先取特権者に直接の取立てを認める点で、質権者にだけある規定と取り違えています。どちらも誤りです。
- 2アエ:アは留置権による競売を認めない点、エは賃料からの回収を物上代位に限る点で誤りです。抵当権者は担保不動産収益執行によっても賃料を弁済に充てられます。
- 3イウ:ウは弁済期到来後なら質物の所有権を取得させる合意ができるという正しい記述ですが、イは一般の先取特権者に直接の取立てを認める誤りです。イではなくオと組み合わせます。
- 5エオ:オは後順位譲渡担保権者は私的実行できないとする判例どおりの記述ですが、エは担保不動産収益執行という方法を見落とし、物上代位に限るとする点で誤りです。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問11(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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