令和7年度 午前の部 問12
民法
先取特権に関する問題
先取特権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 雇用関係の先取特権は、債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた最後の6か月間の債権についてのみ存在する。
イ 動産の売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。
ウ 不動産の賃貸の先取特権について、即時取得の規定は準用されない。
エ 同一の不動産について不動産の工事の先取特権と不動産の保存の先取特権とが競合する場合には、不動産の工事の先取特権は、不動産の保存の先取特権に優先する。
オ 不動産の売買の先取特権は、売買契約と同時に不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨の登記がされた場合であっても、その前に登記がされた抵当権に先立って行使することができない。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イウ
- 4イオ
- 5エオ
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✓ これが正解4イオ
解説
イとオが正しい。雇用は期間制限なし、賃貸の先取特権も即時取得準用
先取特権について、民法の条文と判例で判断する問題です。
アについて、民法第308条は、雇用関係の先取特権は給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在すると定めており、期間の制限は置かれていません。最後の6か月間の債権に限るとするアは誤りです。イについて、判例は、動産売買の先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後は、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないとしています。イは正しい記述です。ウについて、第319条は、第192条から第195条までの即時取得の規定を、不動産の賃貸の先取特権を含む第312条から第318条までの先取特権に準用しています。準用されないとするウは誤りです。
エについて、第331条第1項は、同一の不動産について特別の先取特権が競合する場合の順位は第325条各号に掲げる順序に従うとしており、第325条は保存、工事、売買の順に並べています。保存の先取特権が工事の先取特権に優先するので、エは誤りです。オについて、不動産の保存や工事の先取特権には、登記をすれば先に登記された抵当権にも先立って行使できる特則がありますが、不動産の売買の先取特権にはこの特則がありません。抵当権に関する規定が準用され、登記の前後で優劣が決まるので、先に登記された抵当権に先立つことはできず、オは正しい記述です。したがって、イとオの組合せが正解です。
不動産の先取特権は保存・工事・売買の順で強く、抵当権に先立てる特則は保存と工事だけ、と並びで覚えましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:アは雇用関係の先取特権を最後の6か月分に限る点で現行の第308条と合わず、ウは賃貸の先取特権に即時取得の準用がないとする点で第319条と食い違います。どちらも誤りです。
- 2アエ:アは雇用関係の債権に期間の限定を付ける点、エは工事の先取特権を保存の先取特権より上位とする点で、いずれも条文と違います。正しい記述を含みません。
- 3イウ:イは対抗要件を備えた債権譲渡の後は物上代位できないという判例どおりの記述ですが、ウは誤りです。不動産の賃貸の先取特権には即時取得の規定が準用されます。
- 5エオ:オは売買の先取特権が先に登記された抵当権に劣後するという正しい記述ですが、エは不動産の保存と工事の順位を逆にしている点で誤りです。オはイと組み合わせます。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問12(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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