令和7年度 午前の部 問9
民法
即時取得に関する問題
即時取得に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCに対して甲動産を売却し、以後BがCのために引き続き甲動産を保管する意思を表示した場合には、Cは、甲動産を即時取得する。
イ A所有の甲動産をAから預かっていたBが死亡し、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCが、Bを相続し、甲動産の占有を承継した場合には、Cは、甲動産を即時取得する。
ウ A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じていたCとの間で甲動産の売買契約を締結した後、Cが、甲動産についてBが無権利であることを知り、甲動産の現実の引渡しを受けた場合には、Cは、甲動産を即時取得することができない。
エ A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCのために動産に質権を設定し、Cに甲動産の現実の引渡しをした場合には、Cは、甲動産について質権を即時取得する。
オ A所有の甲動産を盗んだBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCに対して甲動産を売却し、現実の引渡しをした場合には、Aは、その盗難から2年間は、Cに対し、甲動産の返還を求めることができる。
- 1アイ
- 2アオ
- 3イウ
- 4ウエ
- 5エオ
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✓ これが正解1アイ
解説
アとイが誤り。占有改定と相続では即時取得は成立しない
即時取得について、民法第192条・第193条と判例で判断する問題です。即時取得は、取引行為によって平穏・公然・善意・無過失で動産の占有を始めた者が、その動産について行使する権利を即時に取得する制度です。
アについて、判例は、占有改定による占有の取得では即時取得は成立しないとしています。BがCのために引き続き保管する意思を表示しただけでは外観上の占有状態が変わらないためです。即時取得するとするアは誤りです。イについて、第192条は取引行為によって占有を始めた者を保護するので、相続による占有の承継は取引行為に当たらず即時取得は成立しません。イは誤りです。ウについて、善意無過失は占有を始めた時点で判断されます。現実の引渡しを受けた時点でCはBの無権利を知っていたので、即時取得はできず、ウは正しい記述です。
エについて、第192条は、占有を始めた者がその動産について行使する権利を取得するとしており、所有権だけでなく質権も即時取得の対象となります。現実の引渡しを受けているので、Cは質権を即時取得し、エは正しい記述です。オについて、第193条は、占有物が盗品または遺失物であるときは、被害者または遺失者は盗難または遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求できるとしています。オは正しい記述です。したがって、アとイの組合せが正解です。
即時取得には取引行為と外観の変わる占有の取得が必要なので、相続と占有改定はどちらも要件を欠く、と覚えておくと見分けられます。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2アオ:アは占有改定で即時取得を認める点で判例と合わない誤りですが、オは盗品について盗難の時から2年間は回復を請求できるという第193条どおりの正しい記述です。
- 3イウ:イは相続による占有の承継で即時取得を認める誤りですが、ウは引渡しの時点で悪意となったCは即時取得できないという正しい記述です。ウではなくアと組み合わせます。
- 4ウエ:ウは引渡しの時点で悪意なら即時取得できないという記述、エは質権も現実の引渡しで即時取得できるという記述で、どちらも正しいものです。誤りはアとイです。
- 5エオ:エは質権の即時取得、オは盗品の回復請求の期間を述べたもので、どちらも条文と判例に沿った正しい記述です。誤っている記述を一つも含みません。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問9(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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