令和6年度 午前の部 問11
民法
留置権に関する問題
民法上の留置権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア AがBに対して甲建物を売却した後、Aが甲建物を引き続き占有していたが、Bがその代金全額を支払う前に甲建物をCに対して売却した場合において、CがAに対して甲建物の明渡しを請求したときは、Aは、Bに対する売買代金債権を被担保債権として留置権を主張することができる。
イ AがBに対して甲建物を売却して引き渡した後、AがCに対して甲建物を売却し、その旨の登記がされた場合において、CがBに対し甲建物の明渡しを請求したときは、Bは、Aに対する債務不履行に基づく損害賠償請求権を被担保債権として留置権を主張することができる。
ウ A所有の甲土地を賃借したBが、甲土地上に乙建物を建築し、Cに乙建物を賃貸した場合において、Cが乙建物について必要費を支出した後、Bの賃料不払を理由にAB間の賃貸借契約が解除され、AがCに対して乙建物からの退去及び甲土地の明渡しを請求したときは、Cは、Bに対する必要費償還請求権を被担保債権とする留置権を主張して、甲土地の明渡しを拒むことができる。
エ A所有の甲建物について譲渡担保権の設定を受けたBが、当該譲渡担保権の実行として甲建物をCに売却した場合において、CがAに対して甲建物の明渡しを請求したときは、Aは、Bに対する清算金支払請求権を被担保債権として留置権を主張することができる。
オ Aを賃借人とし、Bを賃貸人とする甲建物の賃貸借契約がAの賃料不払を理由に解除された後、Aが自らに占有権原のないことを知りながら甲建物をなお占有している間に甲建物について有益費を支出した場合において、BがAに対して甲建物の明渡しを請求したときは、Aは、Bに対する有益費償還請求権を被担保債権として留置権を主張することができない。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イウ
- 4イオ
- 5エオ
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✓ これが正解3イウ
解説
イとウが誤り。二重譲渡の損害賠償や建物の必要費では留置できない
民法上の留置権は、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときに成立します(民法第295条第1項)。どの債権がその物に関して生じたといえるか(牽連性)と、占有が不法に始まった場合の扱いを、判例で確かめる問題です。誤っているものを選びます。
アは正しい記述です。判例は、売主が代金を受け取る前に買主が目的物を第三者に譲渡した場合でも、売主は代金債権を被担保債権として第三者に留置権を主張できるとしています。留置権は物権なので、成立後に物が譲渡されても主張できます。エも正しい記述です。判例は、譲渡担保権者が目的物を第三者に売却した場合、設定者は清算金支払請求権を被担保債権として、その第三者に留置権を主張できるとしています。オも正しい記述です。判例は、賃貸借の解除後に占有権原のないことを知りながら有益費を支出した場合には、民法第295条第2項の類推適用により留置権を主張できないとしています。
イは誤りです。判例は、二重譲渡で第一の買主が所有権を取得できなかった場合の損害賠償請求権は、物に関して生じた債権に当たらないとして、留置権を否定しています。留置しても、損害賠償の債務者である売主に弁済を促す関係にないからです。ウも誤りです。建物の賃借人が建物について支出した必要費の償還請求権は建物に関して生じた債権ですが、敷地である甲土地に関して生じた債権ではありません。判例は、建物についての債権で敷地の明渡しを拒むことはできないとしています。
したがって誤っているのはイとウです。留置することで債務者に弁済を促せる関係にあるか、という視点で牽連性を判断すると見分けやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:ウは建物の必要費で敷地の明渡しまで拒めるとする点で誤りですが、アの売主が代金債権で第三者に留置権を主張できることは判例どおりで正しく、アを誤りとする点が違います。
- 2アエ:アとエはどちらも判例どおりの正しい記述です。売買代金債権も譲渡担保の清算金支払請求権も目的物に関して生じた債権であり、目的物の譲受人に対して留置権を主張できます。
- 4イオ:イは二重譲渡による損害賠償請求権で留置権を認める点で誤りですが、オの権原のないことを知りつつ支出した有益費では留置権を主張できないという記述は判例どおりで正しいものです。
- 5エオ:エとオはどちらも正しい記述です。清算金支払請求権による留置権は認められ、占有権原がないと知った後の有益費の支出については不法な占有の場合に準じて留置権が否定されます。
出典:令和6年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問11(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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