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令和5年度 午前の部 問12

民法

留置権に関する問題

次の対話は、民法上の留置権に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

教授: Aを賃借人、Bを賃貸人とするB所有の甲建物の賃貸借契約の期間中に、Aが甲建物についてBの負担に属する必要費を支出し、Bからその償還を受けないまま、賃貸借契約が終了した事例について、考えてみましょう。この事例において、Aは、Bに対し、必要費償還請求権を被担保債権として、甲建物について留置権を主張することが考えられますが、Aが裁判手続外で留置権を行使した場合には、必要費償還請求権の消滅時効の進行に影響を及ぼしますか。

学生:ア はい。Aが甲建物を留置している間は、必要費償還請求権の消滅時効は進行しません。

教授: Aが、留置権に基づいて甲建物を留置している間に、甲建物について有益費を支出し、これによる価格の増加が現存するときは、Aは、Bに、有益費を償還させることができますか。

学生:イ はい。Aは、Bの選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができます。

教授: Aが、留置権に基づいて甲建物を留置している間に、Bに無断で、第三者に甲建物を賃貸したときは、それによって留置権は当然に消滅しますか。

学生:ウ はい。留置権は、当然に消滅します。

教授: 冒頭の事例において、甲建物が火災により滅失し、Bがこれによる保険金請求権を取得した場合には、Aは、留置権に基づき、この保険金請求権に物上代位することができますか。

学生:エ いいえ。Aは、Bが取得した保険金請求権に物上代位することはできません。

教授: 最後に、冒頭の事例において、実は、甲建物の所有者が当初からCであり、Cに無断で、BがAに甲建物を賃貸していた場合には、Aは、Bに対し、必要費償還請求権を被担保債権として、甲建物について留置権を主張することができますか。

学生:オ はい。Aは、Bに対し、留置権を主張することができます。

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✓ これが正解1アウ

解説

アは留置しても時効は進み、ウは消滅請求が必要で当然消滅しないので誤り

留置権(他人の物を占有する者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで物を手元にとどめる権利)について、民法第297条から第300条までと留置権の性質で判断します。誤っている学生の解答を2つ選びます。

アは誤りです。民法第300条は、留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げないと定めています。物を留置していても、必要費償還請求権の時効は進みます。イは正しい解答です。第299条第2項は、留置権者が有益費を支出したときは、価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、支出した金額又は増価額を償還させることができると定めています。

ウは誤りです。第298条第2項は、留置権者は債務者の承諾を得なければ留置物を賃貸できないとし、同条第3項は、これに違反したときは、債務者は留置権の消滅を請求することができると定めています。無断賃貸で留置権が当然に消えるのではなく、債務者が消滅請求をして初めて消滅します。

エは正しい解答です。留置権は物を手元にとどめて弁済を促す権利で、目的物の価値から優先弁済を受ける権利ではないため、物上代位(目的物が保険金などに変わったときにその請求権に効力を及ぼすこと)は認められません。オも正しい解答です。留置権は物権なので、目的物に関して生じた債権があれば、所有者が誰であっても主張できます。賃貸人Bが所有者でなくても、Aは必要費償還請求権を被担保債権としてBに留置権を主張できます。

したがって、アとウを選ぶ組合せが正解です。留置権は時効を止めない・違反しても消滅請求が必要・物上代位なし、の3点は条文の言葉で覚えておくと便利です。

ほかの選択肢はなぜ違うのか

出典:令和5年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問12(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。

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