令和5年度 午前の部 問19
民法
委任に関する問題
委任に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 受任者は、委任者の許諾を得なくとも、やむを得ない事由があるときは、復受任者を選任することができる。
イ 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用の償還を請求することができるが、支出の日以後におけるその利息の償還を請求することはできない。
ウ 受任者が第三者との間で委任事務を処理するのに必要と認められる金銭債務を負った場合において、受任者が委任者に対して自己に代わってその弁済をすることを請求したときは、委任者は、受任者に対して他の売買契約に基づき代金支払債権を有していても、受任者による当該請求に係る権利を受働債権とし、受任者に対する当該代金支払債権を自働債権として、相殺することができない。
エ 受任者の利益をも目的とする委任については、その利益が専ら受任者が報酬を得ることによるものであるときであっても、これを解除した委任者は、受任者の損害を賠償する義務を負う。
オ 委任の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
- 1アウ
- 2アオ
- 3イウ
- 4イエ
- 5エオ
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✓ これが正解4イエ
解説
イは利息も償還請求でき、エは報酬目的だけなら賠償不要なので誤り
委任について、平成29年改正後の民法第643条以下の規定と判例で判断します。誤っているものを2つ選びます。
アは正しい記述です。民法第644条の2第1項は、受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができないと定めています。裏返せば、やむを得ない事由があれば許諾がなくても選任できます。
イは誤りです。第650条第1項は、受任者が委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができると定めています。利息も請求できます。
ウは正しい記述です。第650条第2項は、受任者が必要な債務を負担したときに、委任者に自己に代わって弁済するよう請求できる権利(代弁済請求権)を定めています。判例は、委任者がこの代弁済請求権を受働債権として、受任者に対する別の債権と相殺することはできないとしています。相殺を認めると、受任者は第三者への債務を負ったままで、代わりに弁済してもらうという制度の目的が果たせないためです。
エは誤りです。第651条第2項第2号は、委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したときに損害賠償義務を負うとしています。受任者の利益が報酬を得ることだけなら、この号には当たりません。オは正しい記述です。第652条は賃貸借の解除の効力を定めた第620条を委任に準用しており、委任の解除は将来に向かってのみ効力を生じます。
したがって、イとエを選ぶ組合せが正解です。報酬だけでは受任者の利益をも目的とする委任にならない、という括弧書きは改正で明文化された点なので、条文の言葉で押さえておくと安心です。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:アとウを選ぶ組合せですが、やむを得ない事由があれば許諾なく復受任者を選べるとするアも、代弁済請求権を受働債権とする相殺を否定したウも正しく、誤りが含まれていません。
- 2アオ:アとオを選ぶ組合せです。アは第644条の2第1項の裏返しとして正しく、オも賃貸借の規定の準用で解除が将来に向かってのみ効力を生じるので正しい記述です。
- 3イウ:イとウを選ぶ組合せです。イは支出の日以後の利息の償還を否定していて誤りですが、ウは代弁済請求権を相殺の受働債権にできないとする判例どおりで、正しい記述にあたります。
- 5エオ:エとオを選ぶ組合せです。エは報酬目的だけの委任を解除しても賠償が必要としていて誤りですが、オは第652条で準用される解除の将来効を述べたもので、正しい記述です。
出典:令和5年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問19(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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