令和5年度 午前の部 問16
民法
履行遅滞に関する問題
履行遅滞に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア Aが死亡したら履行するとの履行期を定めた債務の債務者は、Aが死亡した後に履行の請求を受けていなくとも、Aの死亡を知った時から遅滞の責任を負う。
イ 指図証券に記載された期限の定めのある債務の債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
ウ 詐害行為取消権に基づく受領物返還債務の債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
エ 返還時期の定めのない貸金の返還債務の債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
オ 不法行為に基づく損害賠償債務の債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イエ
- 4イオ
- 5ウオ
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✓ これが正解1アウ
解説
アは不確定期限、ウは判例どおりで正しく、イ・エ・オは時点が違う
履行遅滞(履行期を過ぎても履行しないこと)の責任がいつから生じるかを、民法の条文と判例で判断します。正しいものを2つ選びます。
アは正しい記述です。Aの死亡は、いつか必ず来るが時期が分からない不確定期限です。民法第412条第2項は、不確定期限があるときは、期限の到来した後に履行の請求を受けた時又は期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負うと定めています。請求を受けていなくても、Aの死亡を知った時から遅滞になります。
イは誤りです。第520条の9は、指図証券の債務者は、期限の定めがあるときであっても、期限が到来した後に所持人が証券を提示して履行の請求をした時から遅滞の責任を負うと定めています。証券は転々と流通し、債務者は誰が所持人か分からないためです。
ウは正しい記述です。判例は、詐害行為取消権の行使によって受益者などが負う受領物の返還債務は、期限の定めのない債務として、履行の請求を受けた時から遅滞に陥るとしています。
エは誤りです。消費貸借で返還時期を定めなかったときは、第591条第1項により、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができます。借主は請求を受けてすぐではなく、相当の期間が経過した時から遅滞の責任を負うと理解されています。オも誤りです。判例は、不法行為に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、請求を待たずに遅滞に陥るとしています。
したがって、アとウを選ぶ組合せが正解です。期限の定めのない債務は請求時が原則、貸金は相当期間後、不法行為は発生時、と例外を対にして覚えると便利です。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2アエ:アとエを選ぶ組合せです。アは不確定期限の到来を知った時から遅滞とする第412条第2項どおりで正しいのですが、エは返還時期のない貸金を請求時に遅滞としていて、相当期間の経過を待つ扱いと違います。
- 3イエ:イとエを選ぶ組合せですが、指図証券は期限の到来だけでは遅滞にならないのでイは誤り、返還時期のない貸金も請求と同時には遅滞にならないのでエも誤りで、正しいものが含まれません。
- 4イオ:イとオを選ぶ組合せです。証券の提示と請求を要する指図証券を期限到来時から遅滞とするイも、損害発生時から遅滞となる不法行為を請求時からとするオも、遅滞の始まりを取り違えています。
- 5ウオ:ウとオを選ぶ組合せです。ウは詐害行為取消しによる受領物の返還債務を請求時から遅滞とする判例どおりで正しいものの、オは不法行為の損害賠償債務の遅滞を請求時まで遅らせている点で誤りです。
出典:令和5年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問16(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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