令和7年度 午前の部 問17
民法
弁済に関する問題
次の対話は、弁済に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
教授: 本日は、弁済について検討しましょう。売主Aと買主Bの間の売買契約において、Aが所定の期日にBの住所地に目的物を持参し、その引渡しと同時に代金を支払うとされた事例について、考えてみましょう。約定の期日にBが代金支払の準備をして待っていたのにAがBの住所地に目的物を持参しなかった場合には、Bは、Aに対して履行遅滞による損害賠償請求をすることができますか。
学生:ア Bは、代金支払の準備をしたことを通知してその受領の催告をしなければ、Aに対して、履行遅滞による損害賠償を請求することはできません。
教授: では、冒頭の事例において、Aが約定の期日にBの住所地に目的物を持参したが、その運送に費用を要したとします。当事者が費用の発生を契約時に予測していたのに、その負担について契約で定めていなかったときは、その運送費用は誰が負担しますか。
学生:イ Aが負担します。
教授: 次に、代物弁済についてお聞きします。債務者が、債権者との合意によって、債権者に対して本来の債務の弁済に代えて自己が所有する不動産の譲渡をすることを約し、その後、その不動産について債務者から債権者への所有権移転登記がされた事例について、考えてみましょう。この事例において、代物弁済による債務消滅の効果は、いつ生ずることになりますか。
学生:ウ 代物弁済契約が成立した時点で、債務消滅の効果が生じます。
教授: 同じ事例において、代物弁済契約による不動産の所有権移転の効果は、いつ生ずることになりますか。
学生:エ 代物弁済契約が成立した時点で、所有権移転の効果が生じます。
教授: それでは、少し事例を変えて、本来の債務の弁済に代えて債務者が第三債務者に対する債権を債権者に対して譲渡することとしたときは、代物弁済による債務消滅の効果は、いつ生ずることになりますか。
学生:オ 確定日付のある証書により、債務者が第三債務者に通知をし、又は第三債務者が承諾をした時に、債務消滅の効果が生じます。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イエ
- 4イオ
- 5ウオ
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✓ これが正解1アウ
解説
アとウが誤り。準備して待てば足り、債務消滅は登記の時
弁済の提供・弁済の費用・代物弁済について、民法の規定と判例で判断する問題です。
アについて、AとBの債務は同時履行の関係にあり、Aを履行遅滞にするにはBが自分の債務の弁済の提供をしてAの同時履行の抗弁を失わせる必要があります。ただ、この事例では、Aが期日にBの住所地へ目的物を持参し、その場で代金を支払うと定められているので、Bは期日に代金支払の準備をして待っていれば提供として足りると解されています。準備をしたことの通知と受領の催告までしなければ損害賠償を請求できないとするアは誤りです。イについて、民法第485条は、弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は債務者の負担とすると定めています。目的物の運送費用は目的物を引き渡す債務の弁済の費用なので、その債務者であるAが負担し、イは正しい記述です。
ウについて、判例は、不動産による代物弁済で債務が消滅するのは、所有権移転登記の手続が完了した時、つまり第三者に対する対抗要件を備えた時としています。契約成立の時点で債務が消えるとするウは誤りです。エについて、判例は、代物弁済による所有権移転の効果は、原則として代物弁済契約の意思表示によって生ずるとしています。エは正しい記述です。オについて、債権の譲渡による代物弁済では、確定日付のある証書による通知または承諾がされ、第三者に対する対抗要件が備わった時に債務消滅の効果が生ずると解されています。オは正しい記述です。したがって、アとウの組合せが正解です。
代物弁済は、権利が移るのは合意の時、債務が消えるのは対抗要件を備えた時、と二つの時点を分けて覚えましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2アエ:エは代物弁済による所有権移転が契約の意思表示で生じるという判例どおりの正しい記述です。アは誤りですが、エではなく、登記前に債務消滅を認めるウと組み合わせます。
- 3イエ:イは別段の意思表示がなければ弁済の費用は債務者が負担するという第485条どおりの記述、エは所有権移転を契約時とする判例どおりの記述で、どちらも正しいものです。
- 4イオ:イは運送費用を引渡しの債務者Aの負担とする記述、オは債権譲渡による代物弁済で対抗要件の具備時に債務が消えるとする記述で、どちらも正しく、誤りを含みません。
- 5ウオ:ウは不動産の代物弁済で契約時に債務が消滅するとする誤りですが、オは確定日付のある通知・承諾の時に債務が消滅するという正しい記述です。オではなくアと組み合わせます。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問17(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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