令和4年度 午前の部 問15
民法
判例に関する問題
譲渡担保権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 不動産の譲渡担保権者が、その不動産に設定された先順位の抵当権の被担保債権を代位弁済したことによって取得する求償権は、当然に、譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲に含まれる。
イ 構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保権の設定者が、通常の営業の範囲内で譲渡担保権の目的を構成する個々の動産を売却した場合、買主である第三者は、当該動産について譲渡担保権の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができる。
ウ 譲渡担保権の設定者は、譲渡担保権が実行されて目的物が確定的に譲渡担保権者の所有に帰属し又は換価処分されるまでは、その目的物を正当な権原なく占有する者に対し、その返還を請求することができる。
エ 譲渡担保権が実行されて目的物が第三者に譲渡された場合、譲渡担保権の設定者は、第三者からの引渡請求があっても、清算金の支払を受けるまでは目的物を留置することができる。
オ 譲渡担保権の設定者は、譲渡担保権者が清算金の支払又はその提供をせず、清算金がない旨の通知もしない間であっても、譲渡担保権の目的物の受戻権を放棄して譲渡担保権者に対して清算金の支払を請求することができる。
- 1アエ
- 2アオ
- 3イウ
- 4イオ
- 5ウエ
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✓ これが正解2アオ
解説
アとオが誤りで、イ・ウ・エは譲渡担保の判例どおりです。
譲渡担保(債権の担保のために目的物の所有権を債権者に移す形をとる担保)は民法に規定がなく、出題当時は判例によって規律が形づくられていました。この問題は、その主要な判例の結論を問うものです。
イは正しい記述です。判例は、構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保では、設定者に通常の営業の範囲内で個々の動産を処分する権限が与えられており、その範囲内で売却された動産について、買主は譲渡担保の拘束を受けずに確定的に所有権を取得するとしています。ウも正しく、判例は、譲渡担保が実行されて目的物が確定的に担保権者の所有に帰属するか換価処分されるまでは、設定者は実質的な所有権を失っておらず、目的物を正当な権原なく占有する者に返還を請求できるとしています。エも正しく、判例は、譲渡担保の実行で目的物が第三者に譲渡された場合でも、設定者は清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を第三者に主張できるとしています。
アは誤りです。判例は、譲渡担保権者が先順位抵当権の被担保債権を代位弁済して取得した求償権が、当然に譲渡担保によって担保される債権の範囲に含まれるとはしていません。当然に含まれるとする点が判例と違います。オも誤りで、判例は、設定者が受戻権(債務を弁済して目的物を取り戻す権利)を放棄しても、それによって清算金の支払を請求することはできないとしています。清算金の支払請求ができるのは、担保権者が実行に着手して清算の手続に入った場合です。
したがって、誤っているものはアとオです。清算の主導権は担保権者にあり、設定者が一方的に清算を始めさせることはできない、という視点でオを判断するとよいでしょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アエ:アの誤りは捉えていますが、エを誤りとした点が違います。実行後に目的物を譲り受けた第三者から引渡しを求められても、設定者は清算金を受け取るまで留置できるので、エは正しい記述です。
- 3イウ:イとウはどちらも正しい記述です。通常の営業の範囲内で売られた在庫品は譲渡担保の拘束を受けず、設定者は実行が終わるまで不法占有者に返還を求められます。
- 4イオ:オの誤りは捉えていますが、イを誤りとした点が違います。集合動産の設定者が通常の営業として売却した個々の動産は、買主が確定的に所有権を取得するので、イは正しい記述です。
- 5ウエ:ウとエはどちらも正しい記述です。設定者は実行の完了まで不法占有者に返還を請求でき、清算金を受け取るまでは第三者に対しても目的物をとどめておけます。
出典:令和4年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問15(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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