令和7年度 午前の部 問19
民法
敷金に関する問題
賃貸借に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 賃貸不動産の譲渡により、賃貸人たる地位が譲渡人から譲受人に移転した場合には、譲受人は、敷金の返還に係る譲渡人の債務を承継する。
イ Aに対して甲建物を賃貸している甲建物の所有者BがCに対して甲建物を譲渡し、B及びCが、賃貸人たる地位をBに留保する旨及び甲建物をCがBに賃貸する旨の合意をした後、CがBの債務不履行を理由としてBC間の賃貸借を解除したときは、Cは、Bとの間の賃貸借が終了したことを理由として、Aに対し、甲建物の明渡しを請求することができる。
ウ 賃借人の責めに帰すべき事由によって賃借物の一部が滅失し、使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、賃貸借の解除をすることができる。
エ 賃借物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、賃借人は、賃貸人に修繕が必要である旨を通知しなくても、直ちにその修繕をすることができる。
オ 賃借人は、賃貸人に対し、賃料債務を履行しなかったときは、賃貸借が終了する前であっても、敷金をその弁済に充てることを請求することができる。
- 1アイ
- 2アウ
- 3イオ
- 4ウエ
- 5エオ
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✓ これが正解3イオ
解説
イとオが誤り。留保された地位は譲受人に移り、敷金充当は請求不可
賃貸借について、平成29年改正後の民法の規定で判断する問題です。
アについて、民法第605条の2第4項は、賃貸人たる地位が譲受人に移転したときは、敷金の返還に係る債務は譲受人が承継すると定めています。アは正しい記述です。イについて、第605条の2第2項は、譲渡人と譲受人が賃貸人たる地位を譲渡人に留保し、譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは地位は移転しないとしつつ、後段で、譲渡人と譲受人の間の賃貸借が終了したときは、留保されていた賃貸人たる地位は譲受人に移転すると定めています。BC間の賃貸借が解除されると、CがAに対する賃貸人となるので、Aに明渡しを請求することはできません。イは誤りです。
ウについて、第611条第2項は、賃借物の一部が滅失その他の事由で使用収益できなくなった場合に、残存する部分のみでは目的を達することができないときは、賃借人は契約の解除をすることができるとしています。賃料の減額を定める第1項と違って、賃借人の責めに帰すべき事由によるものかを問わないので、ウは正しい記述です。エについて、第607条の2は、急迫の事情があるときは賃借人がその修繕をすることができるとし、この場合には通知を要件としていません。エは正しい記述です。オについて、第622条の2第2項は、賃貸人は敷金を未払の債務の弁済に充てられるが、賃借人は賃貸人に対し敷金をその債務の弁済に充てることを請求できないとしています。オは誤りです。したがって、イとオの組合せが正解です。
敷金の充当は賃貸人だけの選択肢、賃貸人の地位の留保は賃借人に不利益を及ぼさない仕組み、と両者の立場から整理しましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アイ:イは留保された賃貸人の地位が移ることを見落とした誤りですが、アは賃貸人の地位の移転で譲受人が敷金返還債務を承継するという第605条の2第4項どおりの正しい記述です。
- 2アウ:アは敷金返還債務の承継、ウは残りの部分で目的を達せないときの解除を述べた記述で、どちらも条文どおりの正しいものです。誤っている記述を含みません。
- 4ウエ:ウは賃借人の帰責事由を問わない一部滅失による解除、エは急迫の事情があるときの賃借人による修繕で、どちらも正しい記述です。誤りはイとオです。
- 5エオ:オは賃借人から敷金の充当を請求できるとする誤りですが、エは急迫の事情があれば通知なしで修繕できるという正しい記述です。エではなくイと組み合わせます。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問19(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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