令和5年度 午前の部 問9
民法
所有権に関する問題
次の対話は、所有権の取得に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
教授: 所有権の取得の形態には、承継取得と原始取得の2つがありますね。民法には、付合、混和及び加工の規定がありますが、これらの規定による取得は承継取得と原始取得のどちらに当たりますか。
学生:ア 原始取得に当たります。
教授: Aの所有する甲動産とBの所有する乙動産とが、付合により、損傷しなければ分離することができなくなった場合において、甲動産の方が主たる動産であるときは、その合成物の所有権は誰に帰属しますか。
学生:イ Aに帰属します。
教授: 請負人が自ら材料を提供して建物の建築を始めたが、独立の不動産になっていない建前の状態で工事を中止した後、第三者がその建前に自ら材料を提供して工事を続行して建物を建築した場合には、その建物の所有権の帰属はどの規定により決定されるでしょうか。
学生:ウ 動産の付合の規定により決定されます。
教授: 他人の動産に、自らは他に材料を提供しないで工作を加えた者が加工物の所有権を取得するのはどのような場合ですか。
学生:エ 工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときです。
教授: Aの所有する甲液体とBの所有する乙液体とが混和して識別することができなくなった場合には、その合成物の所有権は誰に帰属しますか。
学生:オ 甲液体と乙液体について主従の区別が可能かどうかにかかわらず、混和の時における価格の割合に応じて、AとBとが共有することになります。
- 1アイ
- 2アエ
- 3イオ
- 4ウエ
- 5ウオ
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✓ これが正解5ウオ
解説
ウは加工の規定で決まり、オは主従があれば主たる者に帰属するので誤り
付合・混和・加工(添付)によって所有権が誰に帰属するかを、民法の規定と判例で判断します。誤っている学生の解答を2つ選びます。
アは正しい解答です。付合・混和・加工による所有権の取得は、前の所有者の権利を引き継ぐのではなく、法律の規定で新たに所有権を取得するものなので、原始取得に当たると理解されています。イも正しく、民法第243条は、所有者を異にする数個の動産が付合により損傷しなければ分離できなくなったときは、合成物の所有権は主たる動産の所有者に帰属すると定めています。主たる動産が甲動産ならAの所有になります。
ウは誤りです。判例は、建前(まだ独立の不動産になっていない建築途中の建物)に第三者が材料を提供して工事を続け建物を完成させた場合、その所有権の帰属は、動産の付合ではなく、加工の規定に基づいて決めるべきだとしています。第三者の工事と材料の価値が大きいことから、工作と材料を合わせて評価する加工の規定がふさわしいと考えられています。
エは正しい解答です。加工の規定は、加工物の所有権は材料の所有者に帰属するのが原則としつつ、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは加工者が取得すると定めています。オは誤りです。民法第245条は混和について前二条(付合の規定)を準用しているので、主従の区別ができるときは主たる物の所有者に帰属し、区別できないときに初めて価格の割合に応じた共有になります。
したがって、ウとオを選ぶ組合せが正解です。混和は付合の準用で、まず主従を見る、と順番で覚えると取り違えにくくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アイ:アとイを選ぶ組合せですが、添付による取得を原始取得とするアも、主たる動産の所有者に合成物が帰属するとするイも民法どおりで、誤りの解答が1つも含まれていません。
- 2アエ:アとエを選ぶ組合せです。原始取得とするアは正しく、工作による価格が材料の価格を著しく超えるときに加工者が取得するとしたエも加工の規定の内容に合っているので、どちらも正しい解答です。
- 3イオ:イとオを選ぶ組合せです。オは主従の区別を無視して共有としている点で誤りですが、イは付合した動産の合成物が主たる動産の所有者に帰属するという第243条のとおりで、正しい解答です。
- 4ウエ:ウとエを選ぶ組合せです。ウは建前の事例を動産の付合で決めるとしていて判例と違いますが、エは加工者が所有権を得る場合を正しく答えているので、この組合せは成り立ちません。
出典:令和5年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問9(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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