令和5年度 午前の部 問14
民法
質権に関する問題
動産質に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 質権者は、質物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、被担保債権の弁済に充当することができる。
イ 質権の設定は、債権者にその目的物を現実に引き渡さなければ、その効力を生じない。
ウ 質権者は、その権利の存続期間内において、質権設定者の承諾がなくとも、質物を第三者に引き渡して、当該第三者のために転質権を設定することができる。
エ 質権者は、質権者による質物の使用について質権設定者の承諾がなく、かつ、目的物の保存のために質物の使用の必要がない場合であっても、質物の使用をすることができる。
オ 質権設定者が被担保債権の弁済前に質権者に対して訴訟を提起して目的物の返還を請求し、質権者が質権の抗弁を主張した場合には、裁判所は、当該請求を棄却するとの判決をするのではなく、被担保債権の弁済と引換えに目的物を引き渡せとの引換給付判決をしなければならない。
- 1アイ
- 2アウ
- 3イオ
- 4ウエ
- 5エオ
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✓ これが正解2アウ
解説
アは留置権の準用、ウは責任転質で正しく、イ・エ・オは誤り
動産質について、民法の質権の規定と、留置権の規定の準用、判例で判断します。正しいものを2つ選びます。
アは正しい記述です。民法第350条は第296条から第300条までなどを質権に準用しており、留置権者の果実収取を定めた第297条も含まれます。質権者は質物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って被担保債権の弁済に充当できます。
イは誤りです。第344条は、質権の設定は債権者にその目的物を引き渡すことによって効力を生ずると定めているだけで、引渡しの方法を現実の引渡しに限っていません。第345条により質権設定者に代わりに占有させること(占有改定)はできませんが、簡易の引渡しや指図による占有移転による設定は認められると理解されています。
ウは正しい記述です。第348条は、質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について転質をすることができると定めています。質権設定者の承諾がなくてもできる転質で、責任転質と呼ばれます。
エは誤りです。第350条で準用される第298条第2項により、質権者は、債務者(質権設定者)の承諾を得なければ質物を使用できず、例外は保存に必要な使用に限られます。オも誤りです。判例は、質権設定者が弁済前に目的物の返還を求めた場合、質権者の留置的効力により請求は棄却されるとしており、留置権のような引換給付判決にはなりません。質権では被担保債権の弁済が先に行われるべきものと考えられているためです。
したがって、アとウを選ぶ組合せが正解です。質権は留置権の規定を借りつつ、占有改定は不可・転質は可・返還請求は棄却、と留置権との違いを並べて覚えると見分けやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アイ:アとイを選ぶ組合せです。アは準用される第297条により果実を弁済に充てられるので正しいのですが、イは設定に現実の引渡しを要求しており、簡易の引渡しなども認められることと合いません。
- 3イオ:イとオを選ぶ組合せですが、引渡しの方法を現実の引渡しに限るイも、質物の返還請求に引換給付判決をするとしたオも誤りで、正しい記述が1つも含まれていません。
- 4ウエ:ウとエを選ぶ組合せです。ウは承諾なしで転質できる第348条どおりで正しいものの、エは保存に必要でない使用まで承諾なしに認めていて、準用される第298条第2項に反します。
- 5エオ:エとオを選ぶ組合せです。承諾のない使用を認めるエも、質権の抗弁に対して引換給付判決を命じるとするオも、条文や判例の結論と違うため、この組合せは成り立ちません。
出典:令和5年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問14(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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