令和8年度 午前の部 問26
刑法
窃盗罪に関する問題
窃盗罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aは、Bに対して融資をする際、B所有の自動車をその融資金額でAに売り渡してその所有権をAに移転し、Bが融資返済期限に相当する買戻期限までに融資金額に一定の利息を付した金額を支払って買戻権を行使しない限り、Aが自動車を任意に処分することができるとする契約をBと締結したところ、Bが融資返済期限までに支払をせず買戻権を喪失したことから、Bに断ることなくBの自宅から同自動車を引き揚げた。この場合、Aに窃盗罪が成立する。
イ Aは、旅館に宿泊した際、宿泊者が宿泊中に使用するために客室内に備え置かれた浴衣を着て外出し、そのまま立ち去った。この場合、Aに窃盗罪ではなく横領罪が成立する。
ウ Aは、深夜、駐車場から、B所有の普通乗用自動車をBに無断で乗り出し、その後4時間余りの間、同自動車を乗り回し、元の場所にこれを戻した。この場合、Aに窃盗罪は成立しない。
エ Aは、公園内のベンチに約3時間座っていたBがポシェットを置き忘れたまま立ち去ったのを目撃し、これを自分の物にしようと考え、Bがその公園から約20m離れたところを歩いているときに、その姿を見ながら、同ポシェットを持ち去った。Bは、その後さらに約200m、約2分間歩いた先で同ポシェットがないことに気付き、公園に戻ったが、既に同ポシェットは見当たらなかった。この場合、Aに窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が成立する。
オ Aは、預金残高100万円であるB名義の銀行口座のキャッシュカードをBから盗み、同カードを現金自動預払機に挿入して100万円を引き出した。この場合、Aにキャッシュカードの窃取について窃盗罪が成立し、これとは別に100万円の引出しについて窃盗罪が成立する。
- 1アウ
- 2アオ
- 3イウ
- 4イエ
- 5エオ
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✓ これが正解2アオ
解説
アとオが正しい。担保の自動車の無断引揚げも、カードと現金も窃盗
窃盗罪(刑法第235条)の成否と、窃盗罪と占有離脱物横領罪の区別について、判例で判断する問題です。
アについて、判例は、自動車金融で買戻権を喪失した債務者の自動車を、債権者が債務者に断りなく引き揚げた事案で、債務者が自動車を事実上支配している以上、たとえ債権者に所有権があっても、その占有を侵害するものとして窃盗罪の成立を認めています。アは正しい記述です。イについて、旅館の客室に備え置かれた浴衣は、宿泊客が使っていても旅館の管理(占有)が及んでいるので、着たまま立ち去る行為は窃盗罪に当たると解されています。横領罪とするイは誤りです。ウについて、判例は、他人の自動車を無断で数時間乗り回し元の場所に戻した事案でも、不法領得の意思を認めて窃盗罪の成立を認めています。ウは誤りです。
エについて、判例は、公園のベンチにポシェットを置き忘れた被害者がまだ近くを歩いている段階で持ち去った事案で、被害者の占有はなお失われていないとして窃盗罪の成立を認めています。本問でもBが約20メートル離れたところを歩いている時点で持ち去っており、窃盗罪が成立するので、占有離脱物横領罪とするエは誤りです。オについて、キャッシュカードの窃取とは別に、ATMから現金を引き出す行為は、ATMを管理する銀行の占有する現金を窃取するものとして、別に窃盗罪が成立します。オは正しい記述です。したがって、アとオの組合せが正解です。
物が誰の事実上の支配の下にあるかを先に決め、他人の支配下にあれば窃盗、誰の支配も離れていれば占有離脱物横領、と順に考えましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1アウ:ウを正しいとみている点が違います。深夜に他人の車を勝手に持ち出し、4時間あまり使えば、元の場所に返しておいても、自分の物のように利用する意思があったとして窃盗罪になります。アは正しい記述です。
- 3イウ:イとウはどちらも誤りです。旅館の浴衣は旅館の占有下にあるので持ち去れば窃盗罪となり、無断での長時間の乗り回しも元に戻したかどうかにかかわらず窃盗罪となります。
- 4イエ:イは客室の浴衣の持ち去りを横領罪とする点、エは置き忘れた直後のポシェットの持ち去りを占有離脱物横領罪とする点で、どちらも窃盗罪の成立を認める判例の考え方と違います。
- 5エオ:オはカードの窃取と現金の引出しのそれぞれに窃盗罪が成立するという正しい記述ですが、エは誤りです。持ち主がまだ近くにいる段階では占有は失われておらず、窃盗罪が成立します。
出典:令和8年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問26(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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