令和8年度 午前の部 問17
民法
同時履行の抗弁に関する問題
同時履行の抗弁等に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
〔冊子の注記〕以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、第4問から第23問までの試験問題については、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 双務契約の当事者の一方の債務が弁済期到来後に債務者の責めに帰すべき事由により履行不能となった場合には、相手方は、当該債務の履行に代わる損害賠償債務の履行が提供されるまでは、その反対給付債務について、同時履行の抗弁を主張することができる。
イ 不動産の買主は、目的不動産の所有権移転登記に係る手続がされていない場合であっても、目的不動産の引渡しを受けたときは、代金の支払を拒むことができない。
ウ 動産の買主は、代金の支払と引換えに、売主に対して受取証書の交付を請求することができる。
エ 双務契約が解除された場合には、各当事者は、その相手方に対する解除による原状回復義務について、同時履行の抗弁を主張することができない。
オ 賃貸借契約が終了した場合には、賃借人は、敷金が返還されるまでは、賃貸人に対して目的不動産の返還を拒むことができる。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イエ
- 4イオ
- 5ウオ
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✓ これが正解1アウ
解説
アとウが正しい。損害賠償債務とも同時履行、受取証書は引換えに請求可
同時履行の抗弁と、それに似た引換えの関係について、民法の条文と判例で判断する問題です。
アについて、民法第533条は、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができると定めています。履行不能で本来の債務が損害賠償債務に変わっても同時履行の関係は続くので、アは正しい記述です。イについて、判例は、不動産の売買では、売主の所有権移転登記の手続への協力と買主の代金の支払とが同時履行の関係に立つとしています。引渡しを受けていても登記がされていなければ代金の支払を拒めるので、イは誤りです。ウについて、民法第486条第1項は、弁済をする者は弁済と引換えに受取証書の交付を請求できると定めています。ウは正しい記述です。
エについて、民法第546条は、解除による原状回復の義務について第533条を準用しています。互いの原状回復義務は同時履行の関係に立つので、エは誤りです。オについて、民法第622条の2第1項は、賃貸人が敷金を返還しなければならない時期を、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときとしています。目的物の明渡しが先で、敷金の返還はその後なので、敷金の返還まで明渡しを拒むことはできず、オは誤りです。したがって、アとウの組合せが正解です。
敷金だけは明渡しが先、と例外を一つ押さえておくと、同時履行を広く認める他の場面との区別がしやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2アエ:アは正しい記述ですが、エは誤りです。契約が解除された場合の双方の原状回復義務については、同時履行の抗弁の規定が準用されているので、抗弁を主張できます。
- 3イエ:イは登記がなくても引渡しを受ければ代金を拒めないとする点、エは解除後の原状回復義務に同時履行の抗弁がないとする点で、どちらも誤りの記述です。
- 4イオ:イとオはどちらも誤りです。不動産の買主は登記がされるまで代金の支払を拒めますし、賃借人は敷金の返還より先に目的物を明け渡さなければなりません。
- 5ウオ:ウは弁済と引換えに受取証書を求められるという正しい記述ですが、オは誤りです。敷金は賃貸物の返還を受けた後に返還されるもので、明渡しとは同時履行の関係に立ちません。
出典:令和8年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問17(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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