第27回 問題36
ソーシャルワークの理論と方法(専門)
次の事例を読んで,問題34から問題36までについて答えなさい。
〔事 例〕
Aさん(53歳,男性)は,35歳の時「誰かが自分の悪口を言っている」と訴えたことから,両親に付き添われてB精神科病院を受診した。そこで統合失調症と診断され,1年間入院した。退院後は両親と暮らしながら治療を続けた。その間に父親が亡くなり,49歳の時に母親が認知症を発症し,Aさんが母親の世話をすることになった。50歳の時にAさんは介護のストレスから病状が悪化し「自分の悪口がテレビで流れている」と夜中に大声を出してテレビを自宅前に放り出し,近所を巻き込む騒ぎとなり,今回の入院となった。Aさんの入院後,母親は民生委員から見守り支援を受けていたが,高齢者施設へ入所した。
入院から1年経過した後,病棟担当になったC精神保健福祉士は,前任者から「Aさんは退院可能だが,退院に消極的」と引継ぎを受け,Aさんと面談をした。Aさんは「不都合なこともないし,このままでいい。自宅は誰も居ないし,一人暮らしは経験がないし,人と話すのは苦手だから無理」と話した。(問題34)
C精神保健福祉士は,地域移行支援を利用して退院したDさんをAさんに紹介し,体験談を話してもらった。Dさんとの交流が半年ほど続き,Aさんは「自分も退院できるかな」とC精神保健福祉士に話した。そこで,C精神保健福祉士はAさんを地域移行支援の利用につなげ,指定一般相談支援事業所のE精神保健福祉士が支援を開始した。E精神保健福祉士は,初回面談でAさんから退院への期待や不安などの揺れ動く気持ちを聞いた。それを踏まえ,Aさんに対して支援を行った。(問題35)
AさんはE精神保健福祉士とグループホームを見学したが,ほかの入居者との交流に負担を感じたため,自宅への退院も考え始めた。E精神保健福祉士と共に数度自宅へ外出をした後,1人で外泊した。外泊後,E精神保健福祉士と面談したAさんは「家の中は何とかなるかもしれない。でも,近所に迷惑を掛けたので,近所の目が怖い。本当は買物にも行きたいのだけど」と話した。(問題36)
その後,Aさんは退院し,障害福祉サービスを利用して一人暮らしを続けている。
次の記述のうち,この後にE精神保健福祉士が行う支援として,適切なものを1つ選びなさい。
- 1近所の目が怖くなくなってから退院することを提案する。
- 2Aさんが外泊する際,Dさんに付き添ってもらうよう調整する。
- 3近所との関係修復を図るために,1軒ずつお詫びに回る。
- 4次回の外泊時には外出しないで済むよう,必要な物をAさんと事前に準備する。
- 5Aさんと一緒に,民生委員に近所付き合いのサポートを依頼しに行く。
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✓ これが正解5Aさんと一緒に,民生委員に近所付き合いのサポートを依頼しに行く。
解説
Aさんと一緒に民生委員へ近所付き合いのサポートを頼みに行きます。
この問は、事例のうち(問題36)の印がある段落、Aさんが自宅で1人で外泊した後にE精神保健福祉士と面談した場面を扱います。退院に向けた計画を具体化していく段階です。
決め手は、Aさんの言葉です。家の中は何とかなるかもしれないが、近所に迷惑を掛けたので近所の目が怖い、本当は買物にも行きたい、と話しています。生活の力にはある程度の見通しが立ち、課題は近所との関係にしぼられてきました。そして、買物に行きたいという本人の希望が語られています。
ここで事例の前半を振り返ると、Aさんの入院後、母親は民生委員から見守り支援を受けていました。民生委員は、地域の住民の立場から相談に応じ、支援につなぐ役割を担う人で、Aさんの家庭の事情もある程度知っています。Aさんと一緒に民生委員を訪ね、近所付き合いのサポートを頼むことは、地域にいる身近な支え手を活用し、Aさんが自分の力で地域の人との関係を築き直すきっかけになります。本人と一緒に行く点も、Aさんの主体性を大切にした関わりです。
見分け方は、本人の希望をかなえる方向で、地域にある資源を本人とともに使う支援を選ぶことです。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1近所の目が怖くなくなってから退院することを提案する。:近所の目が怖くなくなるまで退院を待つのは、Aさんの課題を先延ばしにすることになります。地域での不安は、退院前から支援を組み立てて和らげていくもので、退院を遅らせる理由にはなりません。
- 2Aさんが外泊する際,Dさんに付き添ってもらうよう調整する。:Aさんの不安は近所との関係であり、外泊そのものは1人でできています。Dさんに外泊の付き添いを頼んでも、近所の目が怖いという課題には応えられません。
- 3近所との関係修復を図るために,1軒ずつお詫びに回る。:援助者が近所を1軒ずつお詫びに回るのは、Aさんの主体性を損ない、病状のことを近所に知らせてしまうおそれもあります。関係づくりの方法として適切ではありません。
- 4次回の外泊時には外出しないで済むよう,必要な物をAさんと事前に準備する。:外出しないで済むよう準備するのは、買物にも行きたいというAさんの希望と反対の方向です。近所との関係の不安を避けるだけで、地域で暮らす力を育てる支援になりません。
出典:第27回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題36。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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