令和7年度 午前の部 問3
憲法
条例に関する問題
地方自治に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 地方自治の本旨のうち住民自治の原則とは、地方の政治は、国から独立した団体に委ねられ、その団体の意思と責任において行われるべきであるとするものである。
イ 憲法上の地方公共団体というためには、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在し、かつ、沿革的にみても現実の行政の上においても、地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることが必要である。
ウ ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合には、その地方の実情に応じて規制を施すことを容認する趣旨であると解されるから、これについて規律を設ける条例の規定が国の法令に違反する問題は生じない。
エ ある事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合であっても、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する目的と効果を阻害することがないときは、条例の規定が国の法令に違反する問題は生じない。
オ 条例は、地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であり、国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例で刑罰を定める場合には、法律の授権が相当程度具体的であり、限定されていれば足りる。
- 1アウ
- 2アエ
- 3イエ
- 4イオ
- 5ウオ
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✓ これが正解1アウ
解説
アとウが誤り。アは団体自治の説明、ウは明文がなくても抵触しうる
地方自治について、憲法第92条の地方自治の本旨の意味と、条例に関する最高裁判所の判例で判断する問題です。
アについて、地方自治の本旨は住民自治と団体自治の二つの要素からなると説明されます。地方の政治をその地方の住民の意思に基づいて行うのが住民自治で、国から独立した団体に地方の政治を委ね、その団体の意思と責任で行わせるのは団体自治です。アは団体自治の説明を住民自治としているので誤りです。イについて、判例は、憲法上の地方公共団体というには、住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み共同体意識を持つという社会的基盤があり、沿革的にも現実の行政の上でも地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることが必要としています。イは正しい記述です。
ウについて、判例(徳島市公安条例事件)は、国の法令に明文の規定がない場合でも、その欠如がいかなる規制も施すことなく放置すべきとする趣旨であるときは、これを規律する条例は国の法令に違反しうるとしています。明文がなければ問題は生じないと言い切るウは誤りです。エについて、同じ判例は、法令と条例が併存しても、条例が別の目的に基づく規律を意図し、法令の意図する目的と効果を阻害しないときは、抵触の問題は生じないとしています。エは正しい記述です。オについて、判例は、条例は公選の議員で組織される議会の議決を経て制定される自治立法で法律に類するものであるから、法律の授権が相当な程度に具体的で限定されていれば足りるとしています。オは正しい記述です。したがって、アとウの組合せが正解です。
条例が法令に違反するかは、文言の対比だけでなく趣旨・目的・内容・効果を比べて決める、という判例の物差しで考えましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2アエ:アは団体自治の内容を住民自治と取り違えた誤りですが、エは別目的の条例が法令の目的と効果を阻害しなければ抵触しないという徳島市公安条例事件の判例どおりの正しい記述です。
- 3イエ:イは憲法上の地方公共団体の要件を述べた判例どおりの記述、エは別目的の条例と法令の関係を述べた判例どおりの記述で、どちらも正しいものです。誤りはアとウです。
- 4イオ:イは社会的基盤と自治の基本的権能を要件とする判例、オは条例で刑罰を定めるには相当程度具体的で限定された授権で足りるとする判例のとおりで、どちらも正しい記述です。
- 5ウオ:ウは明文の規定がなければ条例は法令に違反しないとする点で誤りですが、オは条例への罰則の授権について判例どおりの正しい記述です。オではなくアと組み合わせます。
出典:令和7年度 司法書士試験 午前の部(法務省)問3(改変:1問ずつ解ける形に加工(肢の番号をそろえ、冊子の注記を各問に複写し))。解説は当サイト独自のもので、法務省とは関係ありません。
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