第36回 問題80
権利擁護を支える法制度
事例を読んで,Dさんについての後見開始の審判をEさんが申し立てた主な理由として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Dさん(80歳)は,子のEさんが所有する建物に居住していたが,認知症のため,現在は指定介護老人福祉施設に入所している。Dさんの年金だけでは施設利用料の支払いが不足するので,不足分はEさんの預金口座から引き落とされている。施設で安定した生活を営んでいるものの医師からは白内障の手術を勧められている。近時,Dさんの弟であるFさんが多額の財産を遺して亡くなり,Dさんは,Dさんの他の兄弟とともにFさんの財産を相続することとなった。Eさんは,家庭裁判所に対しDさんについて後見を開始する旨の審判を申し立てた。
- 1Dさんの手術についての同意
- 2Dさんが入所する指定介護老人福祉施設との入所契約の解約
- 3Dさんが参加するFさんについての遺産分割協議
- 4Dさんが入所前に居住していたEさん所有の建物の売却
- 5Dさんの利用料不足分を支払っているEさんの預金の払戻し
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✓ これが正解3Dさんが参加するFさんについての遺産分割協議
解説
Dさんが遺産分割協議に加わるには法定代理人が必要だからです。
この事例は、後見開始の審判を申し立てる必要が、何をきっかけに生じたかを読み取る問です。決め手は、弟Fさんが亡くなり、Dさんが他の兄弟とともにFさんの財産を相続することになった、という事情です。相続人が複数いると、誰が何を受け継ぐかを決める遺産分割協議を行います。遺産分割協議は財産の帰属を決める法律行為なので、認知症で判断能力が十分でないDさんがそのまま加わっても有効な合意になりません。
成年後見人が選任されると、成年後見人はDさんの法定代理人として財産に関する法律行為を代わりに行えます。つまり、Dさんが参加するFさんについての遺産分割協議を進めるために、Eさんは後見開始の審判を申し立てたと読むのが自然です。施設で安定して暮らしている、利用料の不足はEさんの口座から払われている、といった記述は、ほかの事情では急いで代理人を立てる必要がないことを示しています。
見分け方は、そのことがDさん本人の財産に関する法律行為か、成年後見人の権限で扱えるか、の2点で確かめることです。
なお、2026年6月に民法等の一部を改正する法律が公布され、後見と保佐を廃止して補助に一元化する見直しが、公布から2年6月以内の政令で定める日に施行される予定です。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1Dさんの手術についての同意:手術などの医的侵襲への同意は本人の身体に関わる事柄で、成年後見人の権限には含まれないと一般に考えられています。後見を開始しても成年後見人が手術に同意できるわけではないため、申立ての主な理由にはなりません。
- 2Dさんが入所する指定介護老人福祉施設との入所契約の解約:Dさんは施設で安定した生活を送っており、入所契約を解約する事情は事例に書かれていません。解約の必要がない以上、それを理由に後見開始を申し立てたとは読めません。
- 4Dさんが入所前に居住していたEさん所有の建物の売却:入所前に住んでいた建物はEさん自身が所有するものです。Eさんは自分の判断で売却できるので、Dさんに成年後見人を付ける必要はありません。
- 5Dさんの利用料不足分を支払っているEさんの預金の払戻し:利用料の不足分を払っている預金口座はEさん名義のものです。Eさんが自分の預金を払い戻すのにDさんの法定代理人は要らないので、申立ての理由にはなりません。
出典:第36回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題80。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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