第36回 問題83
権利擁護を支える法制度
成年被後見人Jさんへの成年後見人による意思決定支援に関する次の記述のうち,「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」に沿った支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1Jさんには意思決定能力がないものとして支援を行う。
- 2Jさんが自ら意思決定できるよう,実行可能なあらゆる支援を行う。
- 3一見して不合理にみえる意思決定をJさんが行っていた場合には,意思決定能力がないものとみなして支援を行う。
- 4本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる場合にも,Jさんにより表明された意思があればそのとおり行動する。
- 5やむを得ずJさんの代行決定を行う場合には,成年後見人にとっての最善の利益に基づく方針を採る。(注) 「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」とは,2020年(令和2年)に,最高裁判所,厚生労働省等により構成される意思決定支援ワーキング・グループが策定したものである。
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✓ これが正解2Jさんが自ら意思決定できるよう,実行可能なあらゆる支援を行う。
解説
本人が自ら決められるよう、実行可能なあらゆる支援を行います。
この問は、意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン(2020年)の基本原則で判断します。ガイドラインはまず、全ての人は意思決定能力があることが推定される、という前提から出発します。そのうえで、本人が自ら意思決定できるよう、実行可能なあらゆる支援を尽くさなければ、代わりに決める代行決定に移ってはならないとしています。また、一見すると不合理にみえる意思決定でも、それだけで意思決定能力がないと判断してはならないとしています。
支援を尽くしても本人の意思決定が難しい場合には、まず本人の価値観や好みから推定される意思(推定意思)に基づいて行動します。推定意思も分からない場合や、本人の示した意思どおりにすると本人にとって見過ごすことのできない重大な影響が生じる場合には、本人の信条や価値観を最大限尊重したうえで、本人にとっての最善の利益に基づく方針をとります。最善の利益に基づく代行決定は最後の手段、という位置づけです。
以上から、Jさんが自ら意思決定できるよう実行可能なあらゆる支援を行う、という記述がガイドラインに沿った支援です。覚え方は、能力の推定→あらゆる支援→不合理でも能力否定しない→推定意思→本人の最善の利益、という段階の順序を、本人を主語にしたまま押さえることです。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1Jさんには意思決定能力がないものとして支…:ガイドラインは、全ての人に意思決定能力があることを推定する立場をとります。Jさんが成年被後見人だからといって、初めから意思決定能力がないものとして扱うのは原則に反します。
- 3一見して不合理にみえる意思決定をJさんが…:一見して不合理にみえる意思決定をしたというだけで、意思決定能力がないとみなしてはならないとされています。本人の価値観に照らせば理由があることも多く、その背景を丁寧に確かめることが求められます。
- 4本人にとって見過ごすことのできない重大な…:表明された意思どおりにすると本人にとって見過ごせない重大な影響が生じる場合は、そのまま実行せず、本人の信条や価値観を尊重しつつ本人にとっての最善の利益に基づく方針をとる段階に移ります。意思があれば常にそのとおりにするわけではありません。
- 5やむを得ずJさんの代行決定を行う場合には…:代行決定は、本人の推定意思に基づき、それも難しいときは本人にとっての最善の利益に基づいて行います。成年後見人にとっての利益を基準にするのは、後見人の立場を優先しており誤りです。
出典:第36回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題83。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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