第28回 問題36
ソーシャルワークの理論と方法(専門)
次の事例を読んで,問題34から問題36までについて答えなさい。
〔事 例〕
A精神保健福祉士(23歳,男性)は大学卒業後,精神科病院に就職し,精神科デイケアの担当となって半年が過ぎた。日々の業務には慣れてきたものの,経験の長いB精神保健福祉士の補助的な役割を担うことが多かった。
ある日のスタッフ会議で,A精神保健福祉士が翌月からプログラム活動を一つ企画して担当することになった。A精神保健福祉士は,デイケアメンバーとの雑談の中で,運動不足を解消したいという声を幾つか聞き,軽スポーツのプログラム活動を企画立案した。5名のメンバーの参加があり,初回ミーティングを開いた。そこでA精神保健福祉士は,そのミーティングでグループワーカーを務めた。(問題34)
プログラム活動が始まって3回目から,新たにデイケアを利用開始したCさん(24歳,男性)が加わった。Cさんは,大学生だった21歳の時に統合失調症と診断され,外来通院していた。記録では,中学生の時にいじめられた出来事があり,人間関係に苦手意識があるとのことだった。当初のCさんは,他のメンバーと距離を置き,活動にほとんど参加しなかった。そこでA精神保健福祉士は,Cさんが孤立するのを防ごうと面接を行った。Cさんは「みんなと話せるようになりたいけど,中学の時みたいになったらどうしようとも思う。自分がよく分からない」と語った。(問題35)
その面接後,Cさんは,少しずつではあるが活動に参加するようになっていった。しかし,過去の出来事から,新たに参加した特定のメンバーが近づくと急に席を離れる等の反応を示し,場の雰囲気を悪くしてしまうことが度々あった。A精神保健福祉士が,Cさんのその態度を面接で取り上げたところ,それ以降,CさんはA精神保健福祉士を避けるようになった。そこで,A精神保健福祉士はCさんとの関わりについて,B精神保健福祉士に時間をとってもらい,面談室で相談した。(問題36)
その後,A精神保健福祉士はCさんとの関係を改善することができた。今ではCさんもデイケアに馴染み,就労に関心を示すようになってきた。
次の記述のうち,この場面でB精神保健福祉士がA精神保健福祉士に対して行ったこととして,適切なものを1つ選びなさい。
- 1プログラム活動のメンバーを追加募集する方針を提示した。
- 2Cさんとの関わりを振り返り,Cさんの行動の背景を考えさせた。
- 3病院の理念を一緒に再確認した。
- 4医学的な知見からCさんに関する助言を得られるように,主治医と調整した。
- 5プログラム活動の担当から外れることを提案した。
答えと解説を見る
✓ これが正解2Cさんとの関わりを振り返り,Cさんの行動の背景を考えさせた。
解説
Bは関わりを振り返らせ、Cさんの行動の背景を考えさせました。
事例を共有する3問のうち3問目で、問題36の印がある段落の場面を扱います。決め手は、A精神保健福祉士がCさんの態度を面接で取り上げたところ避けられるようになり、Cさんとの関わりについて、経験の長いB精神保健福祉士に時間をとってもらい、面談室で相談したという点です。これは、経験のある同じ職種の者が、経験の浅い職員を支え育てるスーパービジョンの場面です。
スーパービジョンには、知識や技術を伝え考える力を育てる教育的機能、気持ちを受け止め支える支持的機能、業務や組織の面から調整する管理的機能があるとされます。この場面でB精神保健福祉士に求められるのは、A精神保健福祉士が自分の関わりを振り返り、Cさんの行動の背景、たとえば過去のいじめの経験から特定のメンバーを避けてしまうことや、態度を指摘されて傷ついた可能性に目を向けられるよう促すことです。答えを与えるのではなく、自分で考えて気付けるよう支えることで、A精神保健福祉士は専門職として成長し、Cさんとの関係を立て直す手がかりを得ます。
ほかの肢は、プログラムの運営方針の提示、病院の理念の確認、主治医との調整、担当の交代で、A精神保健福祉士の気付きを促すものではありません。
したがって適切なのは、Cさんとの関わりを振り返り、行動の背景を考えさせた対応です。スーパービジョンでは、振り返りを通じた気付きと成長を支える、と覚えておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1プログラム活動のメンバーを追加募集する方針を提示した。:メンバーの追加募集の方針を示すのは、プログラム活動の運営に関わる判断です。A精神保健福祉士が相談したのはCさんとの関わり方であり、その悩みに応えるものになっていません。
- 3病院の理念を一緒に再確認した。:病院の理念を一緒に確かめることは、組織の一員としての役割を確かめる意味はあります。しかし、Cさんとの関係に悩むA精神保健福祉士の相談に直接応え、気付きを促すものではありません。
- 4医学的な知見からCさんに関する助言を得られるように,主治医と調整した。:主治医から医学的な助言を得られるよう調整するのは、他の職種に意見を求めるコンサルテーションにつなぐ対応です。B精神保健福祉士自身が、A精神保健福祉士の振り返りを支える場面とは異なります。
- 5プログラム活動の担当から外れることを提案した。:担当から外れるよう提案すると、A精神保健福祉士が関わりを振り返って学ぶ機会がなくなり、Cさんとの関係を立て直すこともできなくなります。成長を支えるスーパービジョンの趣旨に合いません。
出典:第28回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題36。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)