第38回 問題2
医学概論
事例を読んで,緩和ケアに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(45歳,女性)は,肺がんstage Ⅳで抗がん剤治療を受けていたが,全身状態不良のためB病院に入院となった。胸部痛の訴えがあり,オピオイドを内服しているが,疼痛コントロールは不良である。入院時に主治医より,Aさん及びキーパーソンである夫に対して,予後は3か月ほどであり,今後の方針としては緩和ケアに移行すると告知した。その後,Aさんは不安や抑うつ気分を呈するようになった。入院して2週間が経過したが,Aさんの不安や抑うつ気分は改善を認めない。Aさんは入院継続を希望しており,夫も自宅での生活に不安を抱えている。
- 1訪問診療を導入し,自宅退院を促す。
- 2不安や抑うつ気分に対して薬物療法を行う。
- 3Aさんの緩和ケアに対する心理的な抵抗感は少ない。
- 4夫は緩和ケアの対象ではない。
- 5疼痛コントロールは積極的に行わない。
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✓ これが正解2不安や抑うつ気分に対して薬物療法を行う。
解説
改善しない不安や抑うつには、薬物療法も緩和ケアの一部として行います。
緩和ケアは、生命を脅かす病気に直面する患者とその家族について、痛みなどの身体的な問題だけでなく、心理社会的な問題やスピリチュアルな問題も早い時期から評価し、苦痛を予防・軽減して生活の質(QOL)を高める取り組みです。対象は患者本人と家族の両方です。
事例の決め手は、予後の告知の後にAさんが不安や抑うつ気分を示し、入院して2週間が経っても改善していない点です。精神的な苦痛も緩和ケアで扱う苦痛の一つであり、改善がみられない場合には、精神科医などと連携して薬物療法を行うことが選択肢になります。したがって、不安や抑うつ気分に対して薬物療法を行うという記述が最も適切です。
あわせて、Aさん本人は入院の継続を望み、夫も自宅での生活に不安を抱えているので、本人と家族の意向を尊重した支援が求められます。胸部痛のコントロールも不良であり、身体の痛みと心の苦痛の両方を和らげることが、この段階のケアの中心になります。
緩和ケアは終末期だけのケアではなく、身体・心理・社会・スピリチュアルの苦痛を本人と家族の両方について和らげるもの、と押さえておくと判断しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1訪問診療を導入し,自宅退院を促す。:事例では、Aさん本人は入院の継続を希望しており、キーパーソンの夫も自宅での生活に不安を抱えています。本人と家族の意向を確かめないまま在宅への移行を進めることは、意思決定支援の考え方に合いません。
- 3Aさんの緩和ケアに対する心理的な抵抗感は少ない。:Aさんは告知の後から不安や抑うつ気分を呈し、2週間たっても改善していません。この様子からは、緩和ケアへの移行を心理的に受け入れにくい状態がうかがえ、抵抗感が少ないとは読み取れません。
- 4夫は緩和ケアの対象ではない。:緩和ケアは患者だけでなく、その家族も支援の対象に含めます。予後の告知を一緒に受け、今後の生活に不安を抱えている夫は、まさに支えが必要な家族にあたります。
- 5疼痛コントロールは積極的に行わない。:痛みは身体的苦痛の代表で、それを和らげることは緩和ケアの中心的な目標です。オピオイドを内服しても痛みのコントロールが不良なので、薬の調整などによって積極的に痛みを和らげる必要があります。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題2。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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