第36回 問題8
心理学と心理的支援
知覚に関する次の記述のうち,大きさの恒常性の事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1形と大きさが同じ図形は,空間内でまとまっているように知覚される。
- 2電光掲示板で表示されている絵や文字が動いて,大きさが変化して見える。
- 3同じ人物が遠くにいる場合と近くにいる場合とでは,距離の違いほどに人の大きさが違って見えない。
- 4線遠近法を使った絵画では,奥行きを感じることで書かれている物の大きさの違いが知覚される。
- 5月を見ると,建物の上など低い位置にあるときは,天空高くにあるときよりも大きく見える。
答えと解説を見る
✓ これが正解3同じ人物が遠くにいる場合と近くにいる場合とでは,距離の違いほどに人の大きさが違って見えない。
解説
人が遠くにいても小さく見えすぎないのが、大きさの恒常性です。
知覚の恒常性とは、目に映る刺激が変わっても、対象の性質を比較的一定のものとして感じ取る働きのことです。大きさの恒常性はその一つで、ものとの距離が変わって網膜に映る像の大きさが変化しても、ものの大きさをほぼ同じに感じる現象を指します。
たとえば、同じ人が遠くに立っているとき、網膜に映る像は近くにいるときよりずっと小さくなります。それでも私たちは、その人が急に小さくなったとは感じず、距離の違いほどには大きさの差を感じません。脳が距離の手がかりを使って大きさを補正しているためです。したがって、同じ人物が遠くにいても近くにいても、距離ほどには大きさが違って見えないという記述が最も適切です。
ほかの記述は、別の知覚の働きを述べています。似た形のものがまとまって見えるのは群化、点滅する光が動いて見えるのは仮現運動、線遠近法の絵で奥行きを感じるのは絵画的な奥行きの手がかり、地平線近くの月が大きく見えるのは月の錯視と呼ばれる現象です。
見分け方は、同じ対象を距離などの条件を変えて見たときに、見え方が保たれているかどうかに注目することです。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1形と大きさが同じ図形は,空間内でまとまっているように知覚される。:形や大きさが似たものがまとまりとして見えるのは、ゲシュタルト心理学でいう群化の働きです。距離が変わっても大きさが保たれるという恒常性の例ではありません。
- 2電光掲示板で表示されている絵や文字が動いて,大きさが変化して見える。:電光掲示板の光が順に点滅すると、絵や文字が動いているように見えます。これは仮現運動と呼ばれる現象で、実際には動きのない刺激から動きを感じ取る例です。
- 4線遠近法を使った絵画では,奥行きを感じることで書かれている物の大きさの違いが知覚される。:線遠近法は、平面の絵の中で奥行きを感じさせる手がかりの一つです。描かれた物の大きさの違いを奥行きから読み取る話で、同じ対象を距離を変えて見る場面の説明ではありません。
- 5月を見ると,建物の上など低い位置にあるときは,天空高くにあるときよりも大きく見える。:地平線近くの月が、空高くにあるときより大きく見えるのは月の錯視と呼ばれる現象です。実際の大きさや距離が変わらないのに違って見える錯視の例で、大きさの恒常性の例とはされません。
出典:第36回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題8。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)