第26回 問題80
精神障害リハビリテーション論
次の事例を読んで,問題78から問題80までについて答えなさい。
〔事 例〕
Aさん(40歳,男性)は,20代後半にうつ病で通院したことがある。その後,回復してIT企業に就職し,仕事に懸命に取り組んでいた。ところが,最近,Aさんが開発したソフトウェアの不具合が複数発生したため対応に追われ,疲労困憊し,食欲不振や不眠も現れ,ふさぎ込むようになった。心配した妻に連れられて,かつて通院していたY精神科病院を受診した。Aさんは,診察の際に医師に,「死にたい」と言っており,うつ病の再発と診断されたため,休職して入院した。
Y精神科病院のB精神保健福祉士が,Aさんに詳しく話を聞くと,「ここ数か月は毎日残業で,休日にも出勤していた」と話した。そこで,妻に,最近1か月の時間外労働の時間数を職場に確認してもらったところ,160時間を超えていることが分かった。B精神保健福祉士は,この状況は,ある社会保険制度の「心理的負荷による精神障害の認定基準」(以下,認定基準)に該当するのではないかと考え,Aさんにこの制度の説明をしたところ,申請の意思が示されたため,必要書類を一緒に準備し,Z機関に提出した。(問題78)
入院中のAさんは,責任感や経済的な理由から復職を急いでおり,病状が安定しない日が続いたが,2か月後,Z機関から「認定基準」に該当すると認定された。(問題79)
その後,Aさんは1か月ほどで退院することができた。退院してから半年がたち,通院中のAさんからB精神保健福祉士は復職の相談を受けた。その中で,「復職を主治医に相談したところ,賛同してくれた。ただし,職場には時間外労働の在り方について考えてもらわなければいけないと言っていた」「今後は体調を崩さないように,今の自分に合った働き方を考えたい」などの言葉が聞かれたため,B精神保健福祉士は,U機関による精神障害者総合雇用支援の職場復帰支援の利用をAさんと一緒に検討することとなった。(問題80)
次の記述のうち,U機関の職場復帰支援として,正しいものを1つ選びなさい。
- 1休職者と離職者が支援の対象である。
- 2標準的な支援実施期間は,1年間である。
- 3雇用事業主への支援が行われる。
- 4公務員も支援の対象となる。
- 5自立支援給付の対象となる。
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✓ これが正解3雇用事業主への支援が行われる。
解説
地域障害者職業センターのリワーク支援では、雇用事業主も支援します。
この問は同じ事例の3問目で、(問題80)の段落が中心です。退院から半年たったAさんは復職の相談をし、主治医は復職に賛同しつつ、職場には時間外労働の在り方を考えてもらう必要があると話しました。Aさん自身も、今の自分に合った働き方を考えたいと話しています。そこでB精神保健福祉士は、U機関による精神障害者総合雇用支援の職場復帰支援の利用を検討しました。
精神障害者総合雇用支援を行うのは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が各都道府県に置く地域障害者職業センターです。その職場復帰支援は、リワーク支援と呼ばれます。決め手は、主治医の、職場にも考えてもらわなければならないという言葉です。リワーク支援は、休職している本人、雇用している事業主、主治医の三者の合意のもとで進められ、事業主に対しても、復職時の仕事の内容や労働条件の設定、職場環境の整備、必要な配慮について助言や援助を行います。雇用事業主への支援が行われるという記述は正しい内容です。
他の記述は仕組みと合いません。リワーク支援は休職中の人が対象で、離職した人には別の支援があります。支援期間は標準でおよそ12週間です。雇用保険の被保険者として雇われている人が対象のため、公務員は利用できません。障害者総合支援法の自立支援給付のサービスでもありません。
見分け方として、リワーク支援は休職者・事業主・主治医の三者で進める復職支援、と押さえておくとよいでしょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1休職者と離職者が支援の対象である。:リワーク支援は、休職している人が職場に戻るためのプログラムです。すでに離職した人は、就職に向けた職業準備支援やジョブコーチ支援などの別の支援を検討します。
- 2標準的な支援実施期間は,1年間である。:地域障害者職業センターのリワーク支援は、標準でおよそ12週間程度の期間で行われ、状況に応じて個別に設定されます。1年間を標準とするものではありません。
- 4公務員も支援の対象となる。:地域障害者職業センターの職場復帰のプログラムを使えるのは、民間の事業所などで雇用保険に加入して働いている人です。国家公務員や地方公務員はこの仕組みを使えません。
- 5自立支援給付の対象となる。:地域障害者職業センターの支援は、障害者雇用促進の枠組みで行われるものです。障害者総合支援法の介護給付や訓練等給付などの自立支援給付には含まれません。
出典:第26回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題80。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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