第26回 問題8
精神医学と精神医療
Dさん(38歳,男性)は,不眠を主訴に精神科クリニックを受診した。医師が不眠の理由を尋ねると,「常に誰かに後を付けられている。道を行く全ての人が,自分のことを話している。自分を狙っている組織がある」と訴えた。診察の結果,Dさんは,統合失調症と診断され,薬物療法を含む治療が開始された。その後来院した時,Dさんは精神科クリニックのE精神保健福祉士に,「組織の人がそこに来ている気がする。どう思いますか」と心配そうに確認を求めてきた。
次の記述のうち,E精神保健福祉士から,Dさんに対する声かけとして,適切なものを2つ選びなさい。
- 1「あなたの考えは間違っています」と明確に指摘する。
- 2「大変ですね。おつらいですね」と共感を示す。
- 3「あなたの心配を担当の医師に伝えてみませんか」と促す。
- 4「どういう組織か詳しく教えてください」と説明を求める。
- 5「組織が攻撃してくることはあり得ません」と述べた上でその理由を論理的に説明する。
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✓ これが正解2「大変ですね。おつらいですね」と共感を示す。
✓ これが正解3「あなたの心配を担当の医師に伝えてみませんか」と促す。
解説
妄想は否定も深追いもせず、つらさに共感し医師へつなぎます。
事例問題では、Dさんが心配そうに確認を求めてきた場面が決め手です。統合失調症の被害妄想は、本人にとっては現実の体験として感じられており、周りが理屈で否定しても揺らぎにくいものです。そのため関わる側は、妄想の内容を肯定も否定もせず、本人が感じている不安やつらさの方に焦点を当てるのが基本とされます。この問は2つ選ぶ問です。
大変ですね、おつらいですねと共感を示す声かけは、妄想の真偽には踏み込まず、怖さや不安という気持ちを受け止めるものです。Dさんが安心して話せる関係を保つことにつながり、適切です。
また、その心配を担当の医師に伝えてみることを促す声かけは、症状の変化を治療に生かすための働きかけです。Dさんは薬物療法を含む治療を始めたばかりで、不安が続いていることを医師が知ることは治療の調整に役立ちます。精神保健福祉士が一人で抱え込まず、医療チームにつなぐ点でも適切です。
覚え方として、妄想への声かけは、否定しない・深追いしない・気持ちに共感する・医師につなぐ、の4点で確かめると判断しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1「あなたの考えは間違っています」と明確に指摘する。:妄想は本人にとって確かな体験なので、間違いだと正面から指摘しても考えは変わりにくく、分かってもらえないという思いを強めます。信頼関係を損ね、相談しにくくなるおそれがあります。
- 4「どういう組織か詳しく教えてください」と説明を求める。:組織の様子を詳しく尋ねると、妄想の内容に関心を向けて深めることになり、Dさんの不安をかえって強めるおそれがあります。焦点は内容ではなく、本人の怖さやつらさに置くのが基本です。
- 5「組織が攻撃してくることはあり得ません」と述べた上でその理由を論理的に説明する。:理由を論理的に説明して否定しても、妄想は理屈で修正されにくいものです。説得の形をとることで、Dさんは自分の体験を否定されたと感じ、援助者との関係が遠のくおそれがあります。
出典:第26回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題8。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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