第26回 問題46
ソーシャルワークの理論と方法(専門)
統合失調症の娘をもつEさん(70歳,女性)は10年前より家族相談員として活動している。ある日の相談会に,Fさん(45歳,女性)が初めて相談に訪れ,「息子が病気になったのは親のせいなのでしょうか」と沈鬱な表情で話した。Eさんは,「私も娘が病気になった頃は自分を責めてばかりでした」と話すと,Fさんは,「Eさんもそうだったのですか」と言い,涙を流した。その後Fさんは度々相談会に訪れ,半年経った頃には,「自分を責めてもしょうがないですね。自分の人生を楽しんでもいいですよね」と笑顔で話すようになった。EさんはFさんの変化に励まされ,相談員の活動にやりがいを感じた。
次のうち,家族相談員の活動を通して,Eさんにもたらされたことを示す概念として,適切なものを1つ選びなさい。
- 1ピア・アドボケイト
- 2カタルシス
- 3ヘルパー・セラピー原理
- 4バウンダリー
- 5リフレーミング
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✓ これが正解3ヘルパー・セラピー原理
解説
人を助けることで助け手自身が得る効果は、ヘルパー・セラピー原理です。
この事例は、統合失調症の娘をもつEさんが、家族相談員として同じ立場の親の相談にのる場面です。問われているのは、相談を受けたFさんではなく、相談員であるEさん自身にもたらされたことです。決め手は事例の最後の、EさんがFさんの変化に励まされ、活動にやりがいを感じた、という部分です。
ヘルパー・セラピー原理は、人を援助する側に回ることで、援助した人自身が自信や役に立っている実感を得て、回復や成長につながるという考え方です。リースマンが提唱したとされ、セルフヘルプグループやピアサポートの効果を説明する概念としてよく使われます。Eさんは、自分も昔は自分を責めてばかりだったという経験を語り、それがFさんの支えになりました。そしてFさんの笑顔に接したことで、Eさん自身が励まされています。これはまさに助ける側が受け取る効果です。
他の言葉は、援助を受ける側や援助関係の説明に使われるもので、Eさんの得たものを表してはいません。
見分け方として、問いが誰にもたらされたことを聞いているかを確かめ、助ける側が得たものならヘルパー・セラピー原理、と結びつけておくと迷いにくくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1ピア・アドボケイト:ピア・アドボケイトは、同じ経験をもつ仲間が当事者の権利を守り、思いを代弁する活動です。Eさんが相談員として得た、励まされたという実感を表す言葉ではありません。
- 2カタルシス:カタルシスは、抑えていた感情を表に出して気持ちが軽くなることです。涙を流したFさんの側に起きた変化に近く、相談員のEさん自身が得たものとは異なります。
- 4バウンダリー:バウンダリーは、自分と他者との間の境界や、援助関係における線引きを指します。Eさんがやりがいを感じたという、援助したことによる効果の説明にはなりません。
- 5リフレーミング:リフレーミングは、出来事の見方の枠組みを変えて意味づけ直す技法です。Fさんの捉え直しには近いものの、問われているEさん自身への効果とは別のことです。
出典:第26回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題46。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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