第26回 問題33
精神保健福祉の原理
次の事例を読んで,問題33から問題35までについて答えなさい。
〔事 例〕
精神科クリニックで働くB精神保健福祉士(以下「Bワーカー」という。)は,中学の養護教諭からの紹介で,嫌なことがあるとリストカットするというCさん(15歳,女性)のインテーク面接を行った。当日母親が付き添っていたが,はじめにCさんから話を聞いた。Bワーカーがバイオサイコソーシャルモデルにのっとって話を聞く中で,Cさんはクラスの誰とも付き合いがなく,休み時間も机に伏していることや,摂食障害の傾向もあることが分かってきた。親については,「父親はいつも酔っている。母親は怒ってばかりなので何も話していない。今日も理由が何か分からずに来ている」と言う。BワーカーはCさんが話してくれたことをねぎらい,医師の診察につなげた。(問題33)
診察後,医師とBワーカーは,Cさんにことわって,母親に状況を話した。母親は驚き,「夫のことで頭が一杯で気が付かなかった。夫は毎晩深酒しては,Cの成績や反抗的態度について私を責めるんです。だからついCには厳しくしてしまって。Cが身体を傷つけたり,無理に食べて吐いたりするのをすぐにやめさせます」と言う。Bワーカーは,「急いでCさんの行動をやめさせようとせず,まずCさんの思いを聞きましょう」と伝えた。
Cさんの通院が始まり,Bワーカーは,母親に対してCさんへの対応を話し合うだけでよいのか気になったため,職能団体が実施するスーパービジョンを受けた。スーパーバイザーからは家族をシステムとして理解すること,母親もクライエントであるという視点をもつこと等の助言を得た。Bワーカーは母親のニーズと共に,親子3人の関係性からCさんの問題を考え始めた。(問題34)
BワーカーはCさんの話を聞くように努め始めた母親を称賛しつつ,母親のニーズを明確にしていった。そして母親に更なる気づきを促すために,「他の家族からも学びましょう」と保健所主催のアルコール問題を理解するための家族教室への参加を勧めた。(問題35)
次のうち,バイオサイコソーシャルモデルの視点でBワーカーが着目したこととして,適切なものを1つ選びなさい。
- 1問題を親には言わずに抱えてきたCさんの強さ
- 2自傷行為や摂食障害に見られるCさんの病理
- 3学校でも家でも孤立し無力化しているCさんの状態
- 4母親が怒ってばかりの家庭に育ってきたというCさんの物語
- 5Cさんの心身の状態と学校や家庭での状態との相互関連性
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✓ これが正解5Cさんの心身の状態と学校や家庭での状態との相互関連性
解説
心身の状態と学校・家庭での状態の相互関連に着目しています。
この問は、事例のうち(問題33)の印が付いた最初の段落、インテーク面接の場面を問うものです。BワーカーはバイオサイコソーシャルモデルにのっとってCさんの話を聞き、リストカットや摂食障害の傾向という心身の状態に加え、クラスの誰とも付き合いがないことや、父親の飲酒・母親との関係といった学校と家庭での状態を聞き取っています。
バイオサイコソーシャルモデルは、エンゲル(Engel, G.)が提唱した考え方で、人の健康や問題を、生物的・心理的・社会的な側面が互いに影響し合うものとして捉えます。どれか一つの側面だけを見るのではなく、それらの相互の関連に目を向ける点が要です。Cさんの心身の状態と学校や家庭での状態との相互関連性に着目したという記述が、このモデルの視点にあたります。
他の記述は、本人の強さ、病理、無力化された状態、本人の語る物語など、一つの側面や別の視点に焦点を当てたものです。
見分け方として、バイオサイコソーシャルモデルの問では、生物・心理・社会の側面が互いにどう関わっているかを捉える記述を選ぶと考えると、ストレングスやナラティブなど他の視点と区別しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1問題を親には言わずに抱えてきたCさんの強さ:問題を親に言わず抱えてきたことを強さとして捉えるのは、本人の長所や力に注目するストレングスの視点です。大切な視点ですが、生物・心理・社会の側面の関連を捉えるこのモデルの着目点とは異なります。
- 2自傷行為や摂食障害に見られるCさんの病理:自傷行為や摂食障害を病理として捉えるのは、生物的・医学的な側面だけに焦点を当てた見方です。このモデルは病理を含む心身の状態を、学校や家庭といった社会的な状況と関連づけて捉えます。
- 3学校でも家でも孤立し無力化しているCさんの状態:孤立し無力化している状態に焦点を当てるのは、力を奪われた状態からの回復を目指すエンパワメントの視点で重視される捉え方です。心身と社会の状況の相互の関連を見るこのモデルの着目点とは異なります。
- 4母親が怒ってばかりの家庭に育ってきたというCさんの物語:母親が怒ってばかりの家庭で育ったという本人の語りに注目するのは、本人が語る物語を重視するナラティブの視点です。生物・心理・社会の各側面の関連を捉えるこのモデルの着目点とは異なります。
出典:第26回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題33。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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