第60回 午後 問18
理学療法治療学
人工骨頭置換術に関する問題
77歳の女性。自宅で転倒し救急車で搬入。右大腿骨頸部骨折に対し、人工骨頭置換術が施行された。術後の右股関節は背臥位で外旋位を呈していた。翌日に患者が右足の筋力低下を訴えたため、MMTを評価したところ右足関節背屈筋0であった。右足関節背屈筋力低下に対する物理療法で適切なのはどれか。
- 1温熱療法
- 2赤外線療法
- 3体外衝撃波療法
- 4超音波療法
- 5電気刺激療法
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✓ これが正解5電気刺激療法
解説
腓骨神経麻痺による背屈筋の麻痺には、電気刺激療法を用います。
この症例は、人工骨頭置換術の後に右股関節が背臥位で外旋位をとっており、翌日に右足関節の背屈筋力が0になっています。下肢が外旋位になると、膝の外側の腓骨頭のあたりがベッドや枕に押し付けられます。腓骨神経はこの腓骨頭のすぐそばの浅い所を通るため、圧迫で麻痺を起こしやすく、足関節を背屈させる前脛骨筋などが働かなくなります。これが術後の腓骨神経麻痺です。
神経の麻痺で筋が動かない時期には、筋の萎縮を防ぎ、神経の回復に合わせて筋の収縮を引き出すことが目標になります。電気刺激療法は、皮膚の上から電流を流して神経や筋を刺激し、筋を収縮させる方法なので、背屈筋の筋力低下に対して適しています。
他の物理療法は目的が異なります。温熱療法や赤外線療法は温めて痛みやこわばりを和らげる方法で、感覚が低下した部位では熱傷に注意が必要です。体外衝撃波療法は腱の付着部の痛みなどに用い、超音波療法は深部を温めたり組織の修復を促したりする方法で、麻痺した筋を収縮させることはできません。
したがって、適切な物理療法は電気刺激療法です。股関節の外旋位から腓骨頭の圧迫、そして背屈の麻痺へとつながる流れを押さえておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1温熱療法:温熱療法は組織を温めて血流を増やし、痛みや筋のこわばりを和らげる方法です。麻痺した筋を収縮させる働きはなく、神経麻痺で感覚が低下している部位では熱傷の危険もあるため適しません。
- 2赤外線療法:赤外線療法は、赤外線で皮膚の表面近くを温める温熱療法の一つです。表面の血流改善や鎮痛が目的で、神経麻痺で動かなくなった背屈筋を働かせる効果は期待できません。
- 3体外衝撃波療法:体外衝撃波療法は、体の外から衝撃波を当てて、足底腱膜炎など腱の付着部の痛みの治療に用いられる方法です。末梢神経の麻痺で働かなくなった筋の筋力低下に対する治療ではありません。
- 4超音波療法:超音波療法は、超音波の振動で深部の組織を温めたり、組織の修復を促したりする方法です。筋の収縮を起こすことはできないため、麻痺による背屈筋の筋力低下には適しません。
出典:第60回 理学療法士国家試験 午後(厚生労働省)問18(改変:1問ずつ解ける形に加工(状況設定の文を各問に複写・図を文字に書き写し))。解説は当サイト独自のもので、厚生労働省とは関係ありません。
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