第60回 午後 問19
理学療法評価学
ASIA機能障害尺度に関する問題
62歳の男性。転倒し前額部を強打し、脊髄損傷と診断された。受傷後3日目のkey muscleのMMTは両側三角筋4、肘屈筋5、肘伸筋2、手関節背屈筋3、中指末節屈筋0、小指外転筋0、下肢筋0。両側乳頭部以下の触覚と痛覚は脱失。肛門の随意収縮と感覚は保たれていた。この患者のASIA機能障害尺度[ASIA Impairment Scale〈AIS〉]はどれか。
- 1A
- 2B
- 3C
- 4D
- 5E
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✓ これが正解2B
解説
正答の表はAIS Bです。仙髄の感覚は残り、下位の運動は無いとみた判定です。
ASIA機能障害尺度(AIS)は、国際基準ISNCSCIで脊髄損傷をAからEに分ける尺度です。Aは仙髄の最下部(S4-5)に感覚も運動も残らない完全損傷、Bは仙髄を含めて感覚は残るが、運動レベルより3髄節を超えて下に運動が残らない感覚不全損傷です。CとDは運動不全損傷で、損傷レベルより下のkey muscleの半分以上が筋力3未満ならC、3以上ならDです。Eは正常です。運動不全と判定する条件は、肛門の随意収縮があること、または仙髄の感覚が残り運動レベルより3髄節を超えて下に運動が残ることです。
この症例は肘屈筋5・手関節背屈筋3で運動レベルはC6、そのすぐ下の肘伸筋(C7)が2で、中指末節屈筋・小指外転筋・下肢筋はすべて0です。運動レベルから3髄節を超えた下には筋収縮がなく、肛門の感覚は保たれています。正答の表は、この見方で感覚は残るが運動は残らない不全損傷としてBと判定しています。
ただし設問には肛門の随意収縮も保たれていたと書かれています。ISNCSCIの定義では肛門の随意収縮があれば運動不全損傷に当たるため、定義どおりに読むとCとなり、正答の表と食い違います。正答の表がBとした理由は公表されていません。AISは、仙髄の感覚と運動で完全か不全かを分け、次に肛門の随意収縮と3髄節の決まりで感覚不全か運動不全かを分け、最後にkey muscleの筋力でCとDを分ける、と順番で覚えましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1A:完全損傷と判定するには、肛門の周りを含む最も下の髄節で感覚と運動がどちらも消えている必要があります。設問では肛門の感覚が保たれていると書かれているので、この条件を満たしません。
- 3C:Cは運動不全損傷で、損傷レベルより下のkey muscleの半分以上が筋力3未満の段階です。設問の肛門の随意収縮を運動の残存と数えるとこの段階に当たりますが、正答の表は下位の運動が残らないとみてCとしていません。
- 4D:Dは損傷レベルより下のkey muscleの半分以上が筋力3以上に保たれている段階です。この症例は肘伸筋が2、それより下の手指と下肢のkey muscleがすべて0で、この条件にまったく届きません。
- 5E:Eは感覚も運動もすべて正常と判定される段階です。乳頭部以下の触覚と痛覚が失われ、下肢の筋力も0であるこの症例は、明らかに正常ではありません。
出典:第60回 理学療法士国家試験 午後(厚生労働省)問19(改変:1問ずつ解ける形に加工(状況設定の文を各問に複写・図を文字に書き写し))。解説は当サイト独自のもので、厚生労働省とは関係ありません。
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