技術的セキュリティ対策とセキュリティ製品|情報セキュリティマネジメント試験 科目A・B サンプル問題 科目B 問54
A社は旅行商品を販売しており,業務の中で顧客情報を取り扱っている。A社が保有する顧客情報は,A社のファイルサーバ1台に保存されている。ファイルサーバは,顧客情報を含むフォルダにある全てのファイルを磁気テープに毎週土曜日にバックアップするよう設定されている。バックアップは2世代分が保存され,ファイルサーバの隣にあるキャビネットに保管されている。A社では年に一度,情報セキュリティに関するリスクの見直しを実施している。情報セキュリティリーダーであるE主任は,A社のデータ保管に関するリスクを見直して図1にまとめた。
図1 A社のデータ保管に関するリスク(抜粋)
1. ランサムウェアによってデータが暗号化され,最新のデータが利用できなくなることによって,最大1週間分の更新情報が失われる。
2. (省略)
3. (省略)
4. (省略)
E主任は,図1の1に関するリスクを現在の対策よりも,より低減するための対策を検討した。
設問 E主任が検討した対策はどれか。解答群のうち,最も適切なものを選べ。
- ✓ これが正解週1回バックアップを取得する代わりに,毎日1回バックアップを取得して7世代分保存する。
- バックアップ後に磁気テープの中のファイルのリストと,ファイルサーバのバックアップ対象フォルダ中のファイルのリストを比較し,差分がないことを確認する。
- バックアップに利用する磁気テープ装置を,より高速な製品に交換する。
- バックアップ用の媒体を磁気テープからハードディスクに変更する。
- バックアップを二組み取得し,うち一組みを遠隔地に保管する。
- ファイルサーバにマルウェア対策ソフトを導入する。
解説
図1の1が数えているのは失う更新情報の量です。量を減らす対策が効きます。
見るべきなのは、図1の1に書かれたリスクの中身です。そこには、ランサムウェアによって最新のデータが利用できなくなったときに、どれだけの更新情報が失われるかが期間で示されています。つまりこの行が数えているのは、暗号化されたあとに取り戻せない作業の量です。 そこで、効く対策かどうかは一点で決まります。その対策が、失われる更新情報の量そのものを小さくするかどうか。この軸に当たらないものは、備えとして意味があっても、図1の1の行には届きません。 量を決めているのは、事例文の冒頭にあるバックアップの取り方です。取得が週に1回であれば、直前の取得から障害までの間に行った更新は控えに入っていないので、最大でその間隔の分だけ失われます。したがって、間隔を短くすれば失う量はそのまま小さくなります。あわせて保存する世代の数を増やしておかないと、さかのぼって戻りたいときに戻れる範囲が狭くなります。 混同しやすいのが、起きにくくする対策と、起きたときの被害を小さくする対策の違いです。感染そのものを防ぐ手立ては前者に属し、防ぎきれなかったときに失う量には触れていません。同じように、控えが正しく取れているかを確かめる対策や、まとめて失う事態に備える対策も、それぞれ別のリスクに向いた備えです。 図1の1が数えている量を先に確かめ、その量に触れる対策だけを残す。この順で読めば、選び方は1つに定まります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 取得したテープの中身と、対象フォルダのファイル一覧を突き合わせる対策です。取り漏れや設定の誤りを見つける側には効きますが、取得の間隔は週に1回のままなので、暗号化されたときに失う更新情報の量は変わりません。
- 装置を替えて取得やリストアに掛かる時間を短くする対策です。作業は速くなりますが、いつ取るかという間隔が変わらなければ、直前の取得から障害までに行った更新は同じだけ失われます。速さと失う量は別です。
- 保存する媒体を替える対策です。読み書きの速さや扱いやすさは変わりますが、どの間隔で取るかはそのままなので、失われる更新情報の量には触れていません。図1の1の行には届きません。
- 同じものをもう一組取り、離れた場所に置く対策です。火災や水害でまとめて失う事態には効きますが、二組とも同じ間隔で取るので、暗号化されたときに失う量は両方とも同じです。
- 感染そのものを起こりにくくする側の対策で、備えとしては意味があります。ただし防ぎきれずに暗号化されたとき、何日分の更新が取り戻せなくなるかという量は変わりません。図1の1が数えているのはその量です。
この問題に関係する言葉
- ランサムウェアファイルを勝手に暗号化し、元に戻すことと引き換えに金銭を要求するマルウェア。復旧の備えがないと支払いを迫られます。
- バックアップ失っても元に戻せるよう、データの複製を別に取っておくこと。取るだけでなく、戻せるかを確かめておくのが要点です。
- 世代管理同じ対象のバックアップを、時点の違う複数の版として残しておくこと。壊れた状態を上書きしても前の版へ戻れます。
出典:情報セキュリティマネジメント試験 科目A・B サンプル問題 科目B 問54
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