第60回 午前 問10
理学療法評価学
理学療法評価学に関する問題
65歳の女性。右利き。突然の意識障害で急性期病院に搬送され、脳出血と診断された。左上下肢の運動麻痺、感覚障害は中等度。端座位では体幹が麻痺側に傾くが、理学療法士の修正に抵抗することなく正中位に戻ることが可能である。常に非麻痺側を向いているが、麻痺側からの刺激にも反応する。食事や歯磨きは非麻痺側上肢で行うが、麻痺側の食べ残しや、磨き残しが多い。この患者に用いる検査で最も優先順位が高いのはどれか。
- 1WAB
- 2WCST
- 3線分抹消試験
- 4道具を使用したパントマイム
- 5SCP〈Scale for Contraversive Pushing〉
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✓ これが正解3線分抹消試験
解説
左側の見落としから半側空間無視を疑い、線分抹消試験を行います。
右利きの人の右大脳半球の脳出血で左片麻痺がある患者が、常に非麻痺側である右を向き、麻痺側である左の食べ残しや磨き残しが多いという様子は、左半側空間無視を強く疑わせる所見です。半側空間無視は、損傷した脳と反対側の空間にある刺激に気付きにくくなる症状で、右半球の損傷で起こりやすいとされます。これを確かめるには、紙面上に並んだ線分に印を付けさせて見落としの偏りを調べる線分抹消試験などの机上検査が用いられます。
WABは失語症の検査で、主に言語の障害を調べます。WCSTはカードの分類課題で、考えの切り替えなどの遂行機能を評価します。道具を使用したパントマイムは失行の評価に用いる課題です。SCPは麻痺側へ押し返す症状の評価尺度ですが、この患者は端座位で麻痺側に傾いても修正に抵抗せず正中位に戻れるので、押す症状は目立ちません。
したがって、最も優先順位が高い検査は線分抹消試験です。生活場面で片側だけの見落としがあれば半側空間無視、修正に抵抗して押し返すなら押す症状、と所見と検査を対応させて覚えると整理できます。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1WAB:WABは、話す・聞く・読む・書くを総合的に調べる失語症の検査です。この患者に言語の障害を示す記述はなく、左側の見落としを調べる目的には合いません。
- 2WCST:WCSTは、カードを色・形・数で分類させ、規則の変化に応じて考えを切り替えられるかをみる遂行機能の検査です。左側の見落としの評価には向きません。
- 4道具を使用したパントマイム:道具を使用したパントマイムは、道具を持たずに使い方を身ぶりで示させ、観念運動失行などをみる課題です。食べ残しの偏りという所見とは目的が異なります。
- 5SCP〈Scale for Contraversive Pushing〉:SCPは、麻痺側へ押し返す症状の程度を評価する尺度です。この患者は傾いても修正に抵抗せず正中位に戻れるため、押す症状を主に評価する必要性は低いと判断できます。
出典:第60回 理学療法士国家試験 午前(厚生労働省)問10(改変:1問ずつ解ける形に加工(状況設定の文を各問に複写・図を文字に書き写し))。解説は当サイト独自のもので、厚生労働省とは関係ありません。
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