平成30年度 問6
民法
不法行為に関する問題
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 1不法行為の時点で胎児であった被害者は、出生後、加害者に対して財産的損害の賠償を請求することはできない。
- 2不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこれを行使する意思を表明し、又はこれを表明したと同視すべき状況にあったときはじめて相続の対象となる。
- 3使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを証明できなければ、被用者に故意又は過失がなくても、使用者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならない。
- 4土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者がその損害を賠償する責任を負うが、当該占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
答えと解説を見る
✓ これが正解4土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者がその損害を賠償する責任を負うが、当該占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
解説
工作物責任は占有者が先に負い、注意を尽くしたときは所有者が負います。
土地の工作物(建物や塀など)の設置又は保存に瑕疵があって他人に損害を与えたとき、民法第717条第1項は、まず工作物の占有者が賠償責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないと定めています。所有者には、注意を尽くしたことによって責任を免れる道が用意されていません。この記述が正しいものです。
ほかの記述を確かめます。胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなされる(第721条)ので、生まれた後に財産的損害の賠償を請求できます。慰謝料請求権について、判例は、被害者が請求の意思を表明しなくても当然に相続の対象になるとしています。使用者責任(第715条)は、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を使用者が賠償するもので、被用者の行為が不法行為の要件を満たすこと、つまり被用者の故意又は過失が前提です。
工作物責任は占有者が一番手、所有者が二番手で、所有者には免責がない、と順番で覚えると見分けやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1不法行為の時点で胎児であった被害者は、出…:胎児は、損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなされます(第721条)。不法行為の時点で胎児だった子も、生まれた後は加害者に財産的損害の賠償を請求できるので、記述は誤りです。
- 2不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこ…:判例は、慰謝料請求権は被害者が生前に請求の意思を表明していなくても、当然に相続の対象になるとしています。意思の表明やそれと同視できる状況を相続の条件とする記述は、判例と異なります。
- 3使用者が被用者の選任及びその事業の監督に…:使用者責任は、被用者がした不法行為の責任を使用者が肩代わりする仕組みです。被用者に故意も過失もなく不法行為が成り立たないなら、使用者が代わって賠償する根拠もないので、記述は誤りです。
出典:平成30年度 管理業務主任者試験(一般社団法人マンション管理業協会)問6
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)