第36回 問題21
社会学と社会システム
次の記述のうち,囚人のジレンマに関する説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1協力し合うことが互いの利益になるにもかかわらず,非協力への個人的誘因が存在する状況。
- 2一人の人間が二つの矛盾した命令を受けて,身動きがとれない状況。
- 3相手のことをよく知らない人同士が,お互いの行為をすれ違いなく了解している状況。
- 4非協力的行動には罰を,協力的行動には報酬を与えることで,協力的行動が促される状況。
- 5公共財の供給に貢献せずに,それを利用するだけの成員が生まれる状況。
答えと解説を見る
✓ これが正解1協力し合うことが互いの利益になるにもかかわらず,非協力への個人的誘因が存在する状況。
解説
協力が得なのに非協力へ誘われる状況が、囚人のジレンマです。
囚人のジレンマは、ゲーム理論でよく知られたモデルです。2人の共犯者が別々に取り調べを受け、互いに黙秘すれば2人とも軽い刑で済むのに、相手が黙秘したときに自分だけ自白すればさらに得をし、逆に自分だけ黙秘すると最も重い刑になる、という状況を考えます。相手の出方が分からないまま一人ひとりが自分の得を考えると、2人とも自白を選び、結局は互いに黙秘した場合より悪い結果になってしまいます。
ここから、全員が協力すれば全員にとって良い結果になるのに、各自が自分の利益を考えると協力しない方へ引っ張られてしまう、という社会的ジレンマの構造が示されます。したがって、協力し合うことが互いの利益になるのに、非協力への個人的な誘因が存在する状況という記述が最も適切です。
ほかの記述は別の現象です。二つの矛盾した命令で身動きがとれないのはダブルバインド、公共財を利用するだけで負担しない成員が生まれるのはフリーライダーの問題です。賞罰で協力を促すのは、ジレンマを解くための手立ての話であって、ジレンマそのものの説明ではありません。
見分け方は、協力すれば皆が得をするのに、各自の得を考えると非協力になる、という食い違いがあるかどうかに注目することです。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2一人の人間が二つの矛盾した命令を受けて,身動きがとれない状況。:一人の人が互いに矛盾する二つの命令を同時に受け、どちらに従っても責められて動けなくなる状況は、ダブルバインドと呼ばれます。協力と非協力の利害の食い違いを示すものではありません。
- 3相手のことをよく知らない人同士が,お互いの行為をすれ違いなく了解している状況。:よく知らない人どうしでも、お互いの行為が食い違わずに了解し合えている状況の説明です。各自の利益と全体の利益がずれて協力が難しくなるジレンマの説明にはなりません。
- 4非協力的行動には罰を,協力的行動には報酬を与えることで,協力的行動が促される状況。:非協力には罰を、協力には報酬を与えて協力を引き出すのは、ジレンマを乗り越えるための仕組みの話です。協力が得なのに非協力へ傾くという状況そのものの説明ではありません。
- 5公共財の供給に貢献せずに,それを利用するだけの成員が生まれる状況。:公共財をつくる負担はせずに、利用だけをする成員が生まれるのは、フリーライダー(ただ乗り)の問題です。社会的ジレンマに関わる現象ですが、囚人のジレンマの説明ではありません。
出典:第36回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題21。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)