第38回 問題18
社会学と社会システム
事例を読んで,次のうち,社会福祉士としてひとり親世帯であるAさん親子の状況を把握するうえで,妥当な社会学の概念として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
非正規の仕事を2つ掛け持ちしながら小学生の子どもBさんを育てている母親Aさんから相談が入った。「怒鳴っても子どもが言うことを聞かなくて困っている。子どもをしつけるにはどうしたらよいか」という。詳しく話を聞いたところ,Bさんは流行りのゲーム機を買ってもらえないため駄々をこねているという。また「自分は親に怒鳴られて育ってきた。おかげでまともな人間になったと思っているし,怒鳴る以外に言うことを聞かない子どもをしつけるやり方もわからない」とのことである。
- 1予言の自己成就
- 2相対的剥奪
- 3社会的孤立
- 4役割葛藤
- 5互酬性
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✓ これが正解2相対的剥奪
解説
周りの子が持つゲーム機を買えない状況は、相対的剥奪として捉えられます。
事例は、母親Aさんからの相談を受け、親子の状況を把握しようとしているインテーク(受理面接)の段階です。Aさんの訴えはしつけの悩みですが、詳しく聞くと、Bさんが駄々をこねる理由は流行りのゲーム機を買ってもらえないことであり、Aさんは非正規の仕事を2つ掛け持ちしながら子どもを育てるひとり親です。決め手は、周りの子どもが持っているものをBさんが持てないという状況です。
相対的剥奪とは、その社会で一般的とされる生活様式や持ち物、活動から、資源の不足によって締め出されている状態を、他の人々との比較で捉える概念です。タウンゼントは、貧困をこの考え方で捉えました。流行りのゲーム機を持てないことは、それ自体が生存に関わるものではありませんが、子ども同士の付き合いや遊びの輪から外れることにつながりえます。Aさん親子の状況を、しつけの問題としてだけでなく、経済的な困難による子どもの相対的剥奪として把握する視点が社会福祉士に求められます。したがって、相対的剥奪が最も適切です。
相談の表面の訴えだけでなく、その背後にある生活の状況を、社会学の概念を手がかりに捉えることが、支援の方向を見極める第一歩になります。他者との比較で生じる欠乏の状態は相対的剥奪、と覚えておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1予言の自己成就:予言の自己成就は、ある状況についての思い込みにもとづいて人々が行動し、その結果として思い込みが現実になる現象で、マートンが示しました。事例には、思い込みが現実を生み出したという経過は書かれていません。
- 3社会的孤立:社会的孤立は、家族や地域などとの接触や交流が乏しい状態を指します。Aさんは自ら相談を寄せており、事例には人との接触が乏しいことを示す記述がないため、親子の状況を説明する概念としては合いません。
- 4役割葛藤:役割葛藤は、一人の人が担う複数の役割への期待が互いに両立しないことで生じる葛藤です。Aさんは仕事と子育てを担っていますが、事例の中心はゲーム機を買えないことをめぐる問題で、役割どうしの衝突は描かれていません。
- 5互酬性:互酬性は、贈り物や助け合いのように、受けたものに対して返すというやりとりの規範を指す概念です。Aさん親子が置かれた状況の理解には結びつかず、事例の中にその手がかりはありません。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題18。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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