第26回 問題24
精神保健福祉の原理
6月のある日,大学のキャンパスソーシャルワーカーであるG精神保健福祉士のところに,留学生のHさん(1年生)が留学生支援センターの職員に付き添われやって来て,面接することとなった。生気のない様子のHさんはぽろぽろ涙をこぼしながら,「日本の大学に憧れて留学したが,同級生との会話は早すぎてついて行くことができない。授業の内容があまり理解できずに困っている。アパートの隣人からはゴミの分別について強い口調で注意され悲しい気持ちになった。母国にいる家族の期待を考えると苦しくて,もうどうしたらよいか分からない」と訴えた。
次の記述のうち,この面接場面においてG精神保健福祉士が優先すべき対応として,適切なものを1つ選びなさい。
- 1同級生への話しかけ方の練習を提案する。
- 2授業について行けるかが心配なので一緒に考えましょうと伝える。
- 3留学生に慣れた家主や近隣の人々がいる物件を探して転居することを勧める。
- 4うつ気味であることを心配し,精神科クリニックへの受診を促す。
- 5ゆっくり話を聞きつつ,Hさんとともに状況の整理を行う。
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✓ これが正解5ゆっくり話を聞きつつ,Hさんとともに状況の整理を行う。
解説
混乱して訴えるHさんの話をゆっくり聞き、ともに状況を整理します。
事例問題では、面接のどの段階か、そしてHさんがどんな状態で来ているかが決め手です。これは留学生支援センターの職員に付き添われて来た初めての面接、つまりインテークの場面です。Hさんは生気がなく涙をこぼしながら、会話について行けないこと、授業が分からないこと、隣人に強く注意されたこと、家族の期待の重さを一度に訴え、もうどうしたらよいか分からないと話しています。
このように複数の困りごとが重なり、本人も混乱しているときは、まず話を十分に聞いて受け止め、何が起きているのかを本人とともに整理することが優先されます。そうすることで信頼関係が生まれ、本人自身が何を優先したいかが見えてきて、その後の支援の方向を一緒に考えられるようになります。ゆっくり話を聞きつつ、Hさんとともに状況の整理を行う対応が、この面接場面で優先すべき対応です。
他の対応は、困りごとの一つだけを取り出して解決策を先に示すものや、本人の訴えを十分に聞く前に専門家の判断を先取りするものです。
見分け方として、初回の面接で本人が混乱しているときは、具体的な解決策よりも、傾聴と状況の整理を先に置く対応を選ぶと考えると判断しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1同級生への話しかけ方の練習を提案する。:同級生との会話は訴えの一部にすぎず、話しかけ方の練習を提案すると、ほかの困りごとを聞かないまま一つの課題に絞ることになります。混乱しているHさんの気持ちを受け止める前に解決策を示す形です。
- 2授業について行けるかが心配なので一緒に考えましょうと伝える。:授業の心配を一緒に考えると伝えるのは、援助者の側で課題を一つに決めてしまう対応です。Hさんは複数の困りごとを抱えて混乱しており、何を優先したいかは、まず状況を整理してから本人と考えることになります。
- 3留学生に慣れた家主や近隣の人々がいる物件を探して転居することを勧める。:転居を勧めるのは、隣人との一件だけを取り上げ、生活の大きな変更を援助者から提案することになります。本人の話を十分に聞く前の段階で、負担の大きい解決策を示すのは優先すべき対応ではありません。
- 4うつ気味であることを心配し,精神科クリニックへの受診を促す。:生気がなく涙を流す様子は気がかりですが、まだ話を十分に聞いていない段階で受診を促すと、本人は自分の訴えを受け止めてもらえなかったと感じるおそれがあります。まず話を聞き、状況を整理することが先です。
出典:第26回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題24。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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