第60回 午前 問15
理学療法治療学
頸髄損傷に関する問題
64歳の男性。バイク走行中に転倒し、救命救急センターへ搬入された。救急外来到着時の頸椎単純CT(別冊No. 2)を別に示す。頸椎脱臼骨折と診断され、同日手術が施行された。術後、四肢麻痺と肛門周囲の感覚脱失を認め、Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類C6B1完全麻痺の頸髄損傷と診断された。目標として設定する動作で最も適切なのはどれか。
〔別冊No. 2〕頸椎単純CT(本文だけで成立する。損傷の高位と分類は本文に明記)
- 1起き上がり動作
- 2屋内平地での車椅子駆動
- 3電動車椅子を用いた移動
- 4側方アプローチの移乗動作
- 5床から車椅子への移乗動作
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✓ これが正解1起き上がり動作
解説
C6B1完全麻痺では、起き上がり動作を目標に設定します。
頸髄損傷の動作の目標は、どの髄節まで筋の機能が残っているかで決まります。Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類は、C5~C8の残存髄節をさらに細かく分け、上肢でどこまで動かせるかを示す分類です。C6B1は、手関節を背屈させる橈側手根伸筋の力が強く残っているものの、円回内筋や上腕三頭筋など、より下位の髄節の筋は働かない段階で、肛門周囲の感覚脱失から完全麻痺と判断されています。
このレベルでは、肩の筋と手関節の背屈を使い、上肢をベッド柵などに引っかける工夫で起き上がりを目指すことが、一般的な目標とされます。屋内平地での車椅子駆動は、手関節の背屈が十分でないC5レベルでもハンドリムの工夫で目標にできる動作です。電動車椅子を用いた移動は、上肢で車椅子をこぐことが難しい、より高位の損傷で主に選ばれます。側方アプローチの移乗動作は、上腕三頭筋など、より下位の髄節の筋が残るレベルで目標になることが多く、床から車椅子への移乗動作はさらに強い上肢の力を要します。
したがって、C6B1完全麻痺の目標として最も適切なのは起き上がり動作です。残存髄節が1つ下がるごとにできる動作が増えていく、という階段の形で到達目標を整理しておくと判断しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2屋内平地での車椅子駆動:屋内平地での車椅子駆動はC6B1でもできる動作ですが、手関節の背屈が弱いC5レベルでもハンドリムに突起を付けるなどの工夫で目標にできます。C6B1の残存機能を生かして新たに目指す目標としては、起き上がり動作のほうが適しています。
- 3電動車椅子を用いた移動:電動車椅子は、肩や肘の筋の力だけでは手動の車椅子をこげない高位の損傷で検討します。手首を強く反らせる力が残るC6B1では、自分の上肢を使う動作の獲得が先の目標です。
- 4側方アプローチの移乗動作:側方アプローチの移乗動作は、プッシュアップで殿部を持ち上げて横へ移る動作です。肘を伸ばす上腕三頭筋など、より下位の髄節の筋が働くレベルで目標になることが多い動作です。
- 5床から車椅子への移乗動作:床から車椅子への移乗動作は、床から座面の高さまで殿部を大きく持ち上げる必要があり、上肢全体の強い筋力が求められます。C6B1の完全麻痺では到達が難しい目標です。
出典:第60回 理学療法士国家試験 午前(厚生労働省)問15(改変:1問ずつ解ける形に加工(状況設定の文を各問に複写・図を文字に書き写し))。解説は当サイト独自のもので、厚生労働省とは関係ありません。
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